第27章 武将達の秘め事⑤
「夜の指南書って、要するにあれか?艶本…」
政宗は三成の手から本を取り上げてニヤニヤ笑いながらパラリと捲ってみる。
「どれどれ…へぇ、結構具体的に書いてあるな。年齢別、最適回数に、交わり禁止の日、交わりを避けるべき体調ってか…これを守れば養生できるって?ふ〜ん、こりゃ、艶本っていうよりは健康本みたいだが…っ…」
興味深げに貢を捲っていた政宗の手がピタリと止まる。
「どうした、政宗?何か…っ、これは…」
政宗の様子に怪訝そうに手元を覗き込んだ秀吉もまた、驚いたように目を瞠り息を呑んだ。
「ほぅ…これはこれは…」
「ちょっと…これのどこが健康本なんですか?色々、具体的過ぎでしょ…」
「はい!まさにこれを見れば交わりの作法が丸分かり、とでも申しましょうか」
秀吉と同じく書物を覗き込んだ光秀、家康、三成もまた三者三様の反応を見せる。
光秀は至極愉しげに口元を緩め、家康はぱっと顔を赤らめて視線を逸らし、三成は何故か我が意を得たりとばかりに頷いていて……
「これは…一応真面目な医学書…ってことでいいんだよな、三成?」
秀吉が気まずそうに目線を泳がせながら、言い難そうに三成に問いかける。
それというのも武将達の目を釘付けにしたその貢には、男女の交わりにおける『お薦めの体位』とやらがご丁寧にも詳細な図解入りで記してあったのだ。
武将達も健全な男であるから、当然ながら枕絵や艶本といったものも見慣れており、そういったものには男女の交わりの様子が赤裸々に描かれていたりするのだが、それらはそもそも興奮を高め欲を満たすために見るものであって、健康的な交わりのためという理由で大っぴらに『お薦め』されてしまうと、何か違うような…何とも居た堪れない気持ちになってしまうのだった。
「お薦めの体位ねぇ…そういうのはその場の雰囲気じゃないか?俺はそんなのいつも意識しないでヤッてるが…」
「女がより気持ち良くなる体位、ということだろう。女が絶頂を感じる交わりが最も良い交わりだというのがこの本の説くところのようだからな。男本位の強引な交わりは寿命を縮めるらしいぞ」
「そんなの当たり前だ。男は女をグズグズに蕩けさせてこそ、だろ?女を気持ち良くさせられない男は男じゃねぇ」
「さすがは政宗様ですね」
自信たっぷりにきっぱりと言い切る政宗に、三成が尊敬の眼差しを向ける。