第27章 武将達の秘め事⑤
「何だよ、そんなに凄かったのか?まぁ、相手は信長様だからなぁ…相当激しく責め立ててそうだよな」
「うっ…言うな、政宗」
政宗のあけすけな言葉に、つい先頃予期せず聞いてしまった敬愛する主君と可愛い妹分が睦み合う艶めいた声や諸々の音が思い出される。
(普段は控えめな朱里があんなに大胆に声を上げるなんて、御館様は一体どんな…っ、いかんいかん、俺は何を想像してるんだっ…不敬だぞ、秀吉)
「不敬だな、秀吉」
「うおっ…光秀っ…」
まるで頭の中を読まれていたような絶妙な間で光秀から声が掛かり、秀吉は飛び上がらんばかりに驚いた。
(ったく…此奴はいつもこうだ。人の心ん中全て見透かしたみたいな涼しい顔しやがって…)
ジトっと光秀を睨んで小言の一つでも言ってやろうと口を開きかけると今度は………
「……やらしい。見損ないましたよ、秀吉さん」
家康が心底冷めたような視線を送ってくる。
(何だ、その変態を見るような冷たい目は!俺が何をしたって言うんだっ…わざとじゃないんだ…)
「秀吉様、朱里様は一体どのようなお声で啼かれるのですか?興味深いです」
(止めなさい、三成っ!お前まで何てこと言うんだ…お前はそんな奴じゃないだろ…)
「お前らなぁ…」
口々に勝手なことを言ってくる武将達に心が振り回される秀吉だったが、それでも偶然聞いてしまったとはいえ大切な主君の閨の秘め事を漏らすわけにはいかないと、余計なことを言わないように気持ちを引き締める。
「で、どんなだったんだ?聞いたんだろ?言えよ」
ニヤニヤ笑いの政宗が、愉しそうに顔を覗き込む。
「お前なぁ、言うわけないだろ。閨事の話など、御館様の威厳に関わる」
(他の奴らに聞かせてたまるか!あれは俺だけの胸に秘めておくんだ……うん、それがいい)
一人納得して、早くこの話は終いにしなければと思うのに、政宗はなおも食い下がってくる。
「相変わらずお固い奴だな。そんな風に勿体ぶって秘密にされると余計に気になるだろ」
「秘密は暴くためにある、とも言うぞ、秀吉。素直になれ」
「う、煩い!光秀、てめぇ…勝手なことばっかり言いやがって…秘密だらけのお前が言うなっ!」
「やれやれ、これは手厳しい。俺の秘め事が聞きたいのか?聞きたければ話してやってもいいが……本当に聞きたければ、だが?」
「……止めろ。色々拙い気がする」