第27章 武将達の秘め事⑤
ぼんやりと考え事をしながら、唐辛子で真っ赤に染まった料理を口に運ぶ家康を政宗はニヤニヤしながら見ていた。
ここにいる武将達は全員まだ妻を迎えておらず、ゆえに縁組の話がこうして頻繁に舞い込むのだった。
相手は大名家の姫君だったり公家のお姫さんだったりと様々だが、いまだ誰一人として身を固めるつもりはないようだ。
(まぁ、信長様もまだだしな。嫁取りは俺らも当分先の話だろう)
天下布武を掲げ、戦に明け暮れる日々は今暫く続きそうであり、信長を始め武将達も身を落ち着けるのはまだまだ先になりそうではあった。
だが、そうは言っても武将達も男であるから女遊びぐらいはする。
皆、決まった相手はいなくても一夜限りの相手には不自由しておらず、それなりに女の経験はあった。
こうして男同士集まれば堅苦しい政の話もするにはするが、盛り上がるのはやはり女子の話題であり……
「政宗さんこそ、どうなんですか?近頃、城の針子の娘といい仲だっていう噂、聞きましたよ?」
家康はジトっと皮肉っぽい目で政宗を見て言う。
「んー?それはまぁ色々とな…」
「おい、政宗!お前、城勤めの女子相手にいい加減なことはするなよ?御館様のお耳に入ればどうなることか…」
家康と政宗の話に割って入った秀吉は、顰めっ面でくどくどと叱言を並べる。
「分かった分かった。そこら辺は上手くやってるから心配するなって!そういうお前はどうなんだ、秀吉。どうせ、誰彼構わず愛想振り撒いてるんだろ?期待させるだけさせてお終い…なんて、罪作りなだけだぞ?」
「なっ…俺はそんなこと…」
「くっ…言い得て妙だな、政宗。秀吉の八方美人ぶりは、筋金入りだからな。泣かせた女は数知れず…か?」
「お前が言うなっ、光秀。その言葉、そっくりそのままお前に返してやる!思わせぶりな態度であちこちの女に声掛けてるって報告が来てるぞ、お前」
「おや、これは心外な…俺のはお務めの一貫だが?全ては御館様の御命令に従ったまでだ」
「御館様のせいにするな!」
「信長様の御命令…ですか?それは一体どのような策なのでしょうか…?」
いつものように言い合う秀吉と光秀を、家康と政宗は半ば呆れたように見ながら箸を運び、その傍らで三成は相変わらず箸からポロポロと溢しながら、訳が分からないといった風に首を傾げている。