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永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第25章 それを恋と呼ぶなら


「……信長様?」

「…………ここだ」

遠慮がちに呼びかけると、廻廊の方から声がしたので、足音を忍ばせてそちらへ行ってみる。

信長様は廻廊の板張りの床に直に腰を下ろし、一人でお酒を飲んでいた。

「座れ」

「あ、はい…失礼します」

この数日、軍議などに同席していて分かったことだが、信長様は余計なことを言わない御方だ。
会話は簡潔、無駄話は一切なし。
グダグダと要領を得ない報告をする家臣が居ようものなら、途端に機嫌が悪くなる。
織田軍では、信長様の考えていることを推し測って、先を読んで行動しなければいけないような感じで、皆が常にピリピリしているのだが、信長様の考えはいつも人の想像を超えていて、先を読める家臣なんて限られているようなのだ。

(ううっ…私だって無理。信長様の考えていることなんて、全然分からない。今宵呼ばれた理由だって…)

安土に来てから、信長様とはまだきちんと話したことはない。
こうして天主に呼ばれるのもまだ数回、いつもは昼間で秀吉さん達が一緒だったし、ひと言ふた言会話を交わす程度だった。
夜に呼ばれるのは今日が初めて……しかも一人でなんて。


「…あ、えっと…お酒、お注ぎ…します?」

「………ああ」

グイッと無造作に差し出された盃にお酒を注ぐ。
緊張で震える手で何とか注いだお酒を、信長様はひと息で飲み干してしまう。
空になった盃に再びお酒を注ぐと、またもや一気に飲み干された。
慌ててもう一度注ぐと、またすぐに空になり……

焦って銚子を持ち上げる私をチラッと横目で見た信長様は、ふっ…と小さく鼻で笑った。

「貴様、俺を酔い潰す気か?」

「えっ!?そ、そんなつもりは…すみません。こういうこと、私、慣れてなくて…」

殿方と二人きりで酒の相手をするなんて初めてだったのだ。


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