第23章 怪我の功名
「ああ……腫れてますね、やっぱり」
「別に…大したことはない」
思わず憮然とした口調で冷たく吐き捨てるように言ってしまう。
朱里は純粋に心配してくれているだけなのだが、この怪我が自分の失態だという自覚がある信長にしてみれば、心配されればされるほど何となく自分が責められているような気がしてしまい、つい不機嫌さが声に出てしまったのだ。
「大したことですよ。捻挫だからといって甘く見ては…」
宥めるように言いながら、信長の足首にそっと触れる。
腫れて熱を持った患部に触れる冷たい手が心地良かった。
朱里の手によって塗り薬が塗られ、再び包帯が巻かれていくのを、信長は黙って見ていた。
甲斐甲斐しく世話を焼く朱里の健気な姿は愛らしく、信長に足の痛みを忘れさせた。
「はい、出来ました!あとはこのお薬湯を飲んで今宵は安静にしてお休み下さいね」
ニッコリと笑いながら差し出された茶碗の中を覗くと、予想どおりというか何というか…ドロリとして見るからに苦そうな液体が入っていた。
「………」
「さぁ、どうぞ!これを飲めば痛みも引くそうですから、よく眠れますよ」
家康の薬がよく効くことは百も承知だが、とんでもなく苦いこともまた事実だ。
痛みが強くなってきている自覚はあったが、できることなら飲みたくない。
「薬湯はいらん」
「!?ダメですよ!こんなに腫れてるんですもの、痛みもおありでしょう?飲んで下さい。きっと楽になります」
「いらん」
「信長様っ!」
責めるような目で睨みながら、朱里は信長にぐっと詰め寄った。
褥の上で、膝が触れそうな距離までにじり寄られる。
「薬を飲むより楽になる方法はある」
「えっ?あっ…」
いきなりグイッと腕を引かれて引き寄せられる。油断していた身体は呆気なく信長の胸元に倒れ込み、あっと思う間もなく褥の上に押し倒されていた。
「やっ…何を…んんっ!」
すぐさま熱い唇が重なって、反論の言葉を塞がれる。
唇ごと喰らい尽くすように深く重ねられ、湿った舌先を強引に押し込まれる。
突然の強引な口付けに頭が混乱している間にも、信長の熱い舌は的確に朱里の口内の感じるところを擽ってくる。
「んんっ、っ、はっ…やっ、待っ…んっ…」