第3章 はじめてのおつかい
「いや、あの、でも、いつもの菓子屋さんに行って金平糖を買ってくるだけですよ?
結華も信長様と何度も行ってて、場所も覚えてるでしょ?
一応、地図も書きますし、護衛もちゃんと付けますよ?」
「駄目だ!あの菓子屋は城下の端の方にあるではないかっ、あんなところまで一人で歩かせるのか?
護衛など……信用ならんっ」
(!?信用ならんって……家臣の人、可哀想すぎるでしょ…)
「あっ、じゃあ、私達がこっそり跡をつけて見守りましょうよ!
それなら信長様も安心じゃないですか?」
「………何故、そこまでしなければならんのだ、訳が分からん。
結華は織田家の姫だぞ?大事に守って、何が悪い?」
心底理解できない、という風に頭を振りながら、わざとらしく溜め息を吐く信長様。
その前に、私はきちんと正座をし直して、居住まいを正す。
「信長様、聞いて下さい。
私は結華を一人で考えて生きていける子に育てたいのです。
織田家の姫だからといって、侍女や家臣達に何でもしてもらって当たり前、ではないのです。
それに、幼くても一人でおつかいができたら、きっとあの子の自信にも繋がると思うから……
できることは何でもさせていきたい、と私は思っています。
将来お嫁に行っても、旦那様に頼りっぱなしじゃいけないと思うんです」
「………………」
「……信長様?」
「……俺もついて行くからな」
「っ…はいっ!ありがとうございます!」
「結華が泣き出したら、そこで即中止だからな」
「っ…えっ?それはちょっと…」
(それも試練の一つなんだけどな……)
「なんだ?文句があるのか?」
ジロっと冷たく睨まれて、それ以上の反論を封じられる。
「……分かりました」
「あと…嫁に行く話などするでない…結華は誰にもやらんぞ」
「なっ…!?」
(もうっ…信長様はほんと結華に甘いんだから…
過保護にも程があるよ…秀吉さんのこと、笑ってられない……)
そんなこんなで、ようやく信長様の了承を取り付けた私は、『結華のはじめてのおつかい大作戦』を決行することにしたのだった。