第18章 元日の秘め事
(んっ…あ…もう朝…?)
肩口に寒気を感じて目が覚めた私は、掛布を引き上げようと寝返りを打つ……が、身体にかかるずしりとした重みに身動きが取れなかった。
(やっ、ちょっ…信長様っ!?うっ…重い…)
身体の上に覆い被さるようにして信長に抱き締められている。
お互いに夜着も身に纏っていないあられもない姿で、私の足の間に信長様の身体がある、というような、とんでもない格好だった。
(やだ…あのまま寝ちゃったんだ。信長様まで…珍しいな)
情事の最中、意識を飛ばしてしまうことも多い私に、信長様はいつも夜着まで着せかけてくれて掛布もしっかり掛けて寝かせてくれるのだ。まさに至れり尽くせり。
だから、一緒になって朝まで裸…なんてことはあまりなかったのだが……
昨日はやはり、一日中休む間もなく続いた謁見のせいで、随分とお疲れだったのだろう。
共に達した後の記憶がないということは、あの後すぐに二人とも眠ってしまったのだ。信長様が朝まで一度も目を覚されないとは、余程疲れが溜まっておられたに違いない。
寝所の中を見渡せば、まだ薄暗く夜は完全には明けていないようだ。
(起きるにはまだ早いし、もう少しゆっくり休んでいただこう)
身動げば信長を起こしてしまうと思い、そっと息を吐いて重さに耐える。苦しいが我慢するしかない。更には、掛布も掛けられず…
「っ…クシュンッ!うっ…寒っ…」
冬の朝の冷え込みは厳しい。
ましてや大胆に肌を晒した格好では、寒さが身に染みるというものだ。このままの格好では風邪を引きかねない。
掛布を掛けたい…いや、それよりも夜着を着たい。
裸のままなんて、恥ずかし過ぎる。
だが…動けばきっと、眠りの浅い信長は目を覚ましてしまうに違いない。
(うぅ、どうしよう…寒いよ。このままじゃ、二人とも風邪引いちゃう…あっ、そうだ!)
かくなる上はもうこれしかない…そう覚悟した私は、覆い被さる信長様のがっしりした逞しい身体に腕を回し、ぎゅううっと縋り付いた。
肌と肌を直接合わせて、ピッタリと抱き合えば、体温が上がるはず。
恥ずかしいが、こうするしかない…そう覚悟した私は、羞恥心から硬く目を閉じたままで、信長様の硬い胸板に自分の胸の膨らみを押し付けるようにして寄り添った。
(んっ…人肌って暖かいな。起きてる時は、こんなこと恥ずかしくて自分からできないけど…)