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永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第17章 小さな恋人②


茶屋を出た信長達は、ぶらぶらと城下を巡る。
これといった目的はなかったから、歩きながら朱里が興味を示したものを見て回ることにする。
今の朱里はやはり、菓子やカラクリなど子供向けのものに惹かれるらしく、興味津々で目を輝かせ、急かすように信長の手を引いては、あちらの店、こちらの店と見て回っている。

「のぶながさま、つぎは、あれがいい!」

「ん、あれか?よし、行くぞ」

子供特有の遠慮がない要求にも、信長は嫌な顔一つせず応じてやる。
あっちへこっちへと忙しなく移動させられながらも、信長は少しも不満を感じることはなかった。
小さな手を握り、子供の歩幅に合わせて歩きながら、朱里との間に子が出来たらこんな感じなのか、などと漠然と考える自分の思考の変化に驚く。

世間的には子がいてもおかしくはない立場だし、家老達からも顔を合わせるたびに『早く世継ぎを』とうるさいぐらいに言われていたが、信長は自分が子を持つことなどは微塵も考えられないでいた。

天下布武を成すため、大望を叶えるために、己の身の一切を投げ出す覚悟だった。
どのような犠牲も厭わぬ。その結果、恨み、憎しみの矢面に立つことになろうとも構わない。ただ己の成すべきをを成すのみだと、そう思ってきた。

妻子を持つことは、己の進む道の妨げになる…そう思い、特別な存在の者を傍に置くことは避けてきたのだ。

そんな風に頑なだった信長の心に触れたのは、朱里が初めてだった。
出逢いは偶然、馬を乗りこなし武術を嗜む女が目新しく感じ、戯れに傍に置いただけだった。
淑やかで美しい外見も魅力的だったが、それ以上に、俺に対しても物怖じせず、真っ直ぐに向かってくる気性に、触れ合うたびに少しずつ惹かれていった。

一たび身体を重ねれば、もっと欲しくなり、朱里の全てを自分のものにしたいと強く願うほどになっていた。
女に執着などしたことはなく、同じ女とは二度と褥を共にすることがなかった俺が、初めて『欲しい』と思った女が朱里だった。

朱里の身も心も、過ごしてきた過去、これからの未来も……全部、欲しい。

(我ながら、ひどい独占欲だと呆れるが…家族の温もりとは無縁だった俺が、一人の女との穏やかな未来を乞い願う日が来るとはな…)



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