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永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第17章 小さな恋人②


足早に天主へ戻った信長は、絨毯の上に朱里を寝かせ、自身の純白の羽織を掛けてやる。

毛足の長い柔らかな絨毯は異国の商人からの献上品で、肌触りも悪くない。子供の昼寝には充分だろう。

ぐっすり眠っているのを確認して文机の前に腰を下ろすと、溜まっていた書簡に目を通し始める。
時折、チラチラと朱里の様子を窺うも、スヤスヤと穏やかな寝息を立てて眠っている。
その様子に、信長は秘かに安堵の溜め息を吐くのだった。

信長にとって、小さな子供と二人だけで過ごすというのは滅多にないことであり、見た目は子供でも中身は朱里なのだと分かってはいるが……どうにも落ち着かないのだ。

(幼き頃には、お市ら妹達とも遊んでやったこともあるが、今、この安土の城には子供はおらんしな…どう接していいものやら分からん)

さて昼寝から目覚めたらどうしようか…と心の内で思案しながらも黙々と書簡を片付けていく。



信長の心配をよそに、隣で政務を片付けていても、秀吉が報告書を抱えて部屋に入ってきても、朱里は一向に起きる気配がなかった。
相変わらず、すぅすぅと可愛らしい寝息を立てて眠っている。

「……子供というものは、一度寝たら、なかなか目が覚めないものなのですね」

眠る朱里の顔を恐る恐る覗き込みながら、秀吉は感心したように言う。

「俺も貴様も、子供の相手など縁遠いからな。分からぬことが多いわ」

困ったように言いながらも、眠る朱里を見守る信長の目は穏やかで優しい。

(まるで子を見守る親のようだな。御館様のこのようなお姿を拝見できるとは、世の中何が起こるか分からんものだ)


「んっ…う〜ん…」

ぐっすり眠っていた朱里だが、唐突に目覚めたようで、目元をゴシゴシと擦りながら身動いでいる。
寝惚けているのか、トロンと蕩けた目をして、寝転んだままでキョロキョロと周りを見回している。

「朱里…目が覚めたか?」

「あぁ〜、のぶながさま〜」

信長の姿を見るや否や、満面の笑みで両手を広げる。

(………『抱っこ』…か?)

抱き上げろという意思表示なのか、信長に向かって両手を広げる朱里を、信長は戸惑いながらも易々と抱き上げて立ち上がる。
キャッキャッと愉しそうな笑い声を上げる姿は、どこからどう見ても幼子だ。

「よく眠っていたな。どうだ?何か変わったことはないか?」

「ん〜、よく分かんない…」




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