第16章 小さな恋人①
床に倒れ込んだ朱里の上に、信長はすぐさま馬乗りになる。
「やっ、ちょっと…信長様っ?」
「貴様、今朝から俺を子供扱いし過ぎだぞ。湯殿でちゃんと見たのか?俺の身体のどこが子供だ?ん?」
グッと腰を押し付けられると、否が応でも感じてしまう熱くて硬いモノの存在感!
「ひゃっ…んっ!やぁ…お、押し付けないでくださ…い」
「んー?何をだ?」
ーグッ…グリッ…
「ちょっ…ちょっと信長様??ダメですってば…」
(うぅ…もう硬くなってる…)
着物の上からでも分かるぐらいに強張ったモノを、ずりずりと擦り付けられて焦ってしまう。
体格差では上回っているはずなのに、朱里は何故か信長の身体を押し退けられず、戸惑っていた。
少年の姿でありながら、大人の男の色気たっぷりで妖艶な笑みを浮かべる姿に、忙しなく鼓動が跳ねる。
ーグリッ…ぬちゃっ…
「やっ、あっ…んんっ、だめぇ…」
衣越しでも、お互いに濡れてしまっているらしく、擦るたびに粘着質な音が鳴る。
(あぁ…どうしよう、着物が…ねちゃねちゃしちゃって…汚しちゃう…)
「の、信長様っ…だめ、濡れて…汚れちゃ…う…」
「んー?脱ぎたいのか?」
「ち、違っ…もぅ!意地悪しないでっ!」
トンっと胸を押し返すと、易々とその手を捕らえられてしまった。
指先に唇が触れる。
「やだっ…離して下さいっ…」
「くくっ…冗談だ。この身体で本気で貴様を抱こうなどとは思っておらん。貴様があまりにも俺を子供扱いするから…まぁ、ちょっとした仕返しだ」
「っ…そんなぁ…」
涙目になる私の目尻にチュッと口付けると、信長様は俄かに身体を起こし立ち上がる。
「ほら、さっさと下がらねば、俺の我慢にも限界があるぞ?」
悪戯っぽく口の端を上げて言いつつ、一転して私と距離を取ろうとするかのような信長様の態度が気になってしまう。
「信長様?あの…大丈夫ですか?」
乱れた襟元を直しながら身体を起こした私は、心配になって問いかける。
そんな私を、信長様は呆れたような目で見る。
「はぁ…貴様はどれだけ鈍感なのだ?人の気も知らないで…」
「えっ?」
「とにかく、今宵はもう休む。一晩寝れば、この身体も元に戻るだろう。また明日な」
それだけ言うと、信長様は入口まで私を追い立てて、ピシャリと襖を閉めてしまった。
「ええっ…の、信長様っ!?」