第16章 小さな恋人①
言い出したら聞かないのが信長様だ。
(うぅ…これはもう、逃れられない…っ…仕方ない、やるしか…)
覚悟を決めて、シャボンを泡立てた手を信長様の身体に恐る恐る伸ばしていく。
首筋から肩口にかけて、泡を滑らすようにそおっと触れると、信長様の身体がピクリと身動ぐ。
(あっ…首、擽ったいのかな…ふふ、可愛い)
信長様の反応を楽しむ余裕なんて正直ないのだが、それでも可愛い反応には嬉しくなる。
身体中に泡を纏わせて、緩々と撫でるように洗っていく。
首筋、肩、腕…胸板、お腹、背中、足の先から太ももへ……
「……おい、肝心なところを忘れてるぞ。焦らしてるのか?」
「ち、違いますっ!うぅ…だって、コレ…」
足の中心でグッと天を突いているソレは、先からトロリと露を溢していて、テラテラと濡れ光っている。
その、子供らしくない卑猥さに、触れるのを躊躇してしまう。
「……朱里」
「ん!?ンンッ…っ…ふっ…あっ…」
突如、クイっと顎に手をかけて顔を上げさせられた私は、間髪入れずに重なってきた信長様の唇の感触に眩暈を覚える。
少年らしい瑞々しい唇の感触にときめいている間もなく、尖らせた舌先をグッと押し込まれて強引に口唇を割られた。
そのまま、ねっとりと舌を絡めて吸い上げられる。
「っ…あっ…んっ…やっ、だめっ…」
(こんな激しい口付け…こんなのダメっ…)
湯気が立ちこめる湯殿の空気に、クラリと眩暈がする。
頭の芯まで蕩けさせるような激しく甘い口付けに、酒に酔ったように思考が覚束なくなる。
ーちゅうっ…ちゅるっ…くちゅっ…ちゅっ…
「はぁ…あっ…信長さまっ…」
うっすらと目を開けてみれば、目の前には幼さの残る少年の顔の信長様。けれど、その深紅の瞳は欲情に塗れて大人の妖艶さを放っていて…心が疼いて目が離せない。
ーちゅっ…
(っ…えっ…?)
永遠に続くかと思われた濃厚な口付けは、可愛い音を立てて唇が離される。
「っ…あのぅ……」
「何だ?そんな物欲しそうな顔をして…惚けてないで早く洗え」
ニヤリと意地悪そうに笑いながら、再び腰を突き出されて、一気に身体の熱が上がる。温まった湯殿の熱さと身体の熱で、のぼせてしまいそうだった。
(もぅ…意地悪ばっかり!)