第16章 小さな恋人①
城へと戻る頃には陽も落ちかけていて、信長様は私の手を引きながら城内に入ると、迷いない足取りで廊下をどんどん進んでいく。
「あ、あの、信長様…どちらへ??」
廊下を一直線に歩きながらも、家臣や侍女達に遭遇しないかと気が気ではない。
更には、秀吉さんに見つかったら即お説教になるのは確実なので、それもまた恐ろしかった。
「湯殿だ。夕餉の前に湯浴みする。当然分かっているとは思うが…一緒に入るぞ、朱里」
「えっ…ええぇっ…やだ、ダメですっ!」
相手は子供とはいえ、信長様だ。一緒に湯に入るなんて恥ずかしいし、ただ入るだけで済む気がしない。
「これは、俺を弟呼ばわりした貴様への罰だ。朱里、貴様に命じる。湯殿で俺の身体を洗え。隅々まで…な?」
意地悪くニヤリと口角を上げて笑う顔は、もはや子供らしさのカケラもなかった。
(うぅ…もう、こうなったら…ほんとに子供だと思うことにしようっ!いや、子供と湯になんて入ったことないんだけど…ちょっと気が早いけど、母親になった気分で子供を洗ってあげるんだと思えば……大丈夫っ!)
(大丈夫じゃないっ!)
私は温かな湯気の立ち込める洗い場で膝立ちしながら、目の前に素っ裸で仁王立ちする信長様を見て呆然としていた。
子供にしては引き締まった身体。
逞しい腕と、くっきり割れた腹筋。
無駄な肉の付いていない腹まわりのその下には………
(っ……コレ、全然、子供らしくないっ!)
まだ薄い下生えは幾分子供らしさがあれど、その下のモノは明らかに小さな身体に似つかわしくない大きさで、ググッと上を向いている。
(ちょっ…なんでこんなことになっちゃってるの!?なんで、もう勃って……)
「あ、あのっ、信長様?」
「何だ?」
嬉しそうにニヤッと笑いながら、見せつけるように腰を前に突き出してくる。引き締まった足の間で、ソレがぶるんっと揺れるのが何だか卑猥で、思わず目を逸らしてしまった。
「……おい、目を逸らすな。早く洗え」
「ええっ…そんなぁ…あぁっ…待って、そんなに近づけないで下さいっ…」
顔のすぐ前にアレが…鼻先が触れそう…もぅ、ヤダっ……
子供のものとはいえ、こんなに至近距離で信長様のモノを見せつけられるのは恥ずかしかった。