第2章 百日(ももか)の祝い
翌日、結華の『百日(ももか)祝いの日』
「うわぁ〜、豪華な御膳だね、政宗っ!」
政宗が結華のために用意してくれた祝膳は、尾頭付きの鯛と、赤飯、蛤の吸い物、煮物、香の物と揃った、豪勢なものだった。
「おう、結華の食い初めの膳だからなぁ、気合いも入るぜ。まぁ、まだ食えねえのが残念だけどな」
「歯固めの石も、神社で綺麗なの頂いてきたぞ」
「ありがとう、秀吉さん」
「朱里、身体の方は大丈夫?あんた、結華の夜泣きであんまり眠れてないでしょ?祝いの席だからって、張り切りすぎて無理しないでよ」
「ふふ…家康、ありがと。夜は、信長様も結華を見てくれるから、程々に休めてるよ」
「あの人が赤子の世話してる姿…ほんと想像できない」
「御館様は、赤子でも何でも泣き止ますのが上手そうだな…啼かすのも、だが…」
「光秀さん…その含みのある言い方、やめて下さいよ」
「御館様は、何をなさっても完璧でいらっしゃいますから!」
「……はぁ…三成は黙ってて」
いつもどおりの、皆のワイワイガヤガヤ、和気藹々とした会話が楽しくて…結華を抱いて皆に囲まれながら、私はじんわりと心の内が暖かくなっていく感覚を噛み締めていた。
結華も朝から機嫌が良く、今も、周りを囲む武将達の声にキョロキョロと反応しながら、興味津々で見えるものに手を伸ばしたりしている。
「結華様〜、ニコニコご機嫌ですね〜……うぉっ、手を握って下さったぞっ!……もう一生、この手は洗わん……」
「秀吉、お前…」
「秀吉さん、あんた…」
「ひ、秀吉さん、落ち着いて……」
「…貴様ら、うるさいぞ」
いつの間にか広間に入ってこられていた信長様は、苦笑いを浮かべながら上座の席に着かれる。義母上様もご一緒だ。
私も慌てて結華を抱いて信長様の隣に座ると、義母上様は結華の様子を見て幸せそうに微笑まれた。
「御館様、本日の結華様の食い初めの儀、誠におめでとうございますっ!益々お健やかにお育ちになりますこと、家臣一同お祈り申し上げます!」
秀吉さんが高らかに祝いの言葉を述べてくれて、祝宴の開始が告げられる。