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永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第16章 小さな恋人①


「危ないっ!」

二人諸共に人混みの中へ倒れかけた俺達を、日焼けした逞しい男の腕ががっしりと抱き止めていた。

「大丈夫かい、二人とも?」

野太い男の声に、慌てて見上げると、腕と同様に日焼けした浅黒い顔の若い男が心配そうに覗き込んでいた。

「す、すいません。助けて下さってありがとうございます」

男の腕の中で慌てて身を起こし、礼を言う朱里は、突然のことに動揺しているようで声が上擦っている。

「人が多いから気を付けなよ、お嬢さん。ええっと…そっちは…」

朱里に人懐っこい笑みを見せた男は、チラリと俺の方を見る。

「あっ、あの…こ、これは私の…お、弟ですっ!」

(………………は?)

男性の視線から隠すように、さり気なく信長様の前に立ち塞がった私は、素性がバレないように必死だった。
だから、信長様が私の背中の後ろで、鬼のように恐ろしい顔で睨んでいるなんて気付くはずもなく………

「弟さん?二人で縁日に来るなんて仲がいいんだね。そうだ、あの石段の上からなら舞がよく見えるよ。案内してあげるから、おいでよ」

「えっ、ええっ…」

男は屈託なく笑うと、さりげなく朱里の手を取って歩き出した。

(くっ…此奴、勝手に朱里の手を握るなど…誰の女だと思って…)

男の大胆かつさりげない行動が腹立たしく苛立つが、さりとてこの姿では『織田信長』だと名乗るわけにもいかず……

内心、怒りのせいで、はらわたが煮え返りそうになりながらも、信長もまた、黙って男の後をついて行くしかなかった。



男の後について歩いていくと、数段高くなっている石段があり、その辺りは人も疎らであったため、上に登ってみると、境内の様子がよく見えた。

「わぁ…ほんと、よく見えます!三郎さ…っ、さ、三郎、ほら見て」

弟という設定なのに、危うく『三郎様』と言いかけてしまい、焦ってしどろもどろになってしまった。
(もぅ…訳分かんないよっ…)

信長様に注目が集まらないように、仲の良い武家の姉弟を演じようとしていた私は、先程助けてくれた男性の熱っぽい視線に気付かなかった。

「お嬢さん、この後よかったら一緒に茶でも飲まないか?美味い甘味を出す茶屋があるんだ」

「えっ、あ、あの……」

いい人そうに見えた男性は、急に強引なぐらいグイグイと距離を詰めてきて…私はようやく、自分が言い寄られていることに気が付いた。

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