第15章 赦す者 赦される者
(そうなのか。俺は…赦されたかったのか…?)
そう理解した瞬間、ポトリ、と一雫、熱い何かが転がり落ちた。
一面に広がる草原を、風がさぁっと吹き抜けていく。
どこまでも広がる草の波が、風に煽られ、ゆらゆらと揺れ動く様を信長は頬を濡らす雫をそのままに、ただ黙って見つめていた。
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それから数日後……
「っ…んっ…信長さま…?」
「ようやく起きたか?」
寝所に射し込む朝日の中で、朱里の目蓋がゆっくりと開く様を眺める。
寝起きの、まだぼんやりと焦点の定まらぬ目が俺を探して彷徨っている。
(夢うつつに、こうして俺を見る朱里はこの上なく愛らしい)
愛しい女の愛らしい姿を、朝から堪能できる至福を噛み締める。
『弔い』に尾張を訪れたあの日から、人を殺すあの夢は全く見なくなっていた。
(朱里の思考も、行動も、俺には理解が及ばないことが多い。こやつは時に俺が想像もつかないことをやってのける。
そして……俺以上に、俺のことを分かっているのやもしれん)
そう思うと、何となく癪な気分になった。
「朱里」
「はい…えっ!?んんっ…!」
起きぬけの朱里の唇を塞ぐと、寝惚け眼が驚きに大きく見開かれる。
それを見下ろしながら、ゆっくりと舌を絡ませて、まだ冷めやらぬ昨夜の熱を再び紐解いていく。
「んっ…んんっ!やっ…」
夜着の裾を少し乱暴に乱し、熱くなった指先で敏感な箇所をするりと撫でると、それだけで朱里の脚がビクリと跳ね上がる。
(少し悪戯して終いにしようと思ったが…これは感度が良すぎる朱里が悪いな)
勝手に納得して、夜着の袷へするりと手を滑り込ませると、既に硬く勃ち上がった胸の尖りをキュッと捻り上げる。
「あぁん!やっ、あっ…」
「くくっ…もうこんなに硬くして…いやらしいな、貴様の身体は」
「っ…の、信長さまっ、待って…私、まだ起きたばかりで…んっ…あぁ…」
「俺はしばらく前に起きていた」
逃げようとする腰を、背後から引き寄せて拘束する。
「んっ…そんなのっ…不公平です…」
(不公平なのは貴様の方だ。俺の心を、俺以上に知っているのだから)
それを責めるつもりはない。
心を握られているのが、これほど心地良いことだということを、朱里と出逢わなければ俺は知る由もなかった。