第14章 朝までずっと
混乱する頭で、この場を乗り切る方法を必死に考えようとするも、足音はどんどん近付いてきていて、もう一刻の猶予もない状況だ。
「くっ…一体どこに行かれたんだ??この辺りはもう、この書庫ぐらいしかないが…あぁ、まだ鍵がかかってるな。昨日、俺が閉めたんだから当たり前か…」
扉の向こうで、ガチャガチャと南京錠の鍵の具合を確かめる音がする。
(やっ、嘘っ…秀吉さん、開けちゃうの??待って待って、まだダメぇ…)
ーぐちゅぅぅ…ぬちゅぬちゅっ…
「ひっ、うっ…(やっ、声が…)」
指を二本に増やされて、ナカに溜まった蜜が泡立つほど激しく掻き混ぜられて、悲鳴に似た喘ぎが口から漏れる。
「……ん?今、なんか声、したか?」
扉の向こうから秀吉さんが不審そうな声で呟くのが聞こえる。
ーカチャンッ
鍵が回り、南京錠が外れる金属音がやけに大きく響く。
(あぁ…もうダメ…)
秀吉さんに信長様との情事を見られるという最悪の状況に、絶望的な気持ちになったその時……
「秀吉っ!待て、その扉、開けるでない」
「………へ?お、御館様!?御館様ですか?ええっ…何故こんなところに……いや、鍵かかってましたよね?えっ?これ、どういうことですか??」
混乱状態の秀吉さんに、信長様は一切の容赦なく冷たく言い放つ。
「煩い、黙れ。良いと言うまで絶対に開けるなよ。開けたらどうなるか…分かっているだろうな?俺の言いつけを守れぬとは言わさんぞ」
「は、ははぁ…」
恐ろしいばかりの剣幕で言い放たれた信長様の命令に、秀吉さんはきっと扉の前で頭を廊下に擦り付けてるに違いなかった。
「の、信長様…?」
「貴様をイかせられぬのは残念だが、ここまでだな。着替えるぞ、朱里。早くしろ、秀吉にその悩ましい姿、見られたくはないだろう?」
「うっ…(なんて意地悪なのっ、もぅ!)」
ようやく身体を離してくれた信長様は、さっさと着物を身に付け始めておられたが、さっきまで指でぐずぐずに蕩けさせられていた私は咄嗟に動くこともできず、自分の着物をかき集めただけで、おたおたしてしまっていた。
(早くしなくちゃ…っ…焦っちゃって上手く着れないよ…)
焦りと緊張から帯結びに悪戦苦闘する私とは反対に、信長様はあっという間に着替え終わっている。
(早っ!全然焦ってないし……)