第14章 朝までずっと
「あっ、信長様も鍵、持って…?「持っておらん」」
間髪入れずに否定されて、ガクリとなる。
「もぅ!じゃあ、どうして隠れちゃったんですか?」
言いながら、内側から引き戸をガチャガチャと引いてみるが、ビクともしない。
「無駄だ、その戸は内側からは開かん。鍵は秀吉しか持っておらん。彼奴は今宵はもう御殿に戻るだろうから、ここは明日の朝まで開くことはないだろうな」
「そんなっ…こうなったら大声で助けを呼ぶしか…」
(こんなところで信長様と二人きりで閉じ込められてるなんて恥ずかし過ぎるけど、この際、背に腹は替えられないっ…)
「呼んでも無駄だろう。この場所は城の中でも奥の方だ…書庫に用事がある者でもなければ人は通りかからぬが、このような遅い時間に来る者はおらんだろう。まぁ…夜間の見回りの者が通るかもしれぬが、それも確実とは言えんな」
何だろう、この場違いなほどの冷静さ。
「信長様…」
「こうなったものは仕方がない。朝まで刻はある。このような色気も何もない場所ではあるが…貴様とゆっくり過ごすとしようか」
「へ? な、何を仰って…ひゃっ…」
ーちゅっ ちゅううぅ…ちゅぷっ…
「あっ…んっ…やっ、あぁっ…」
いきなり深く塞がれた唇は、抵抗する間もなく激しく強く吸われてしまう。
壁に強く押し付けられたまま、信長様の口付けは激しさを増し、差し挿れられた舌が口内を蹂躙する。
(んっ…激しっ…息、できない…)
「やっ…信長さま、待って…苦し…んっ…」
「待てん、今すぐ貴様を寄越せ」
湿った舌が口内を舐め回し、歯列をなぞると、ぞくぞくと震えるような快感が身体中に広がっていく。
唇を重ねたまま、信長様の手は私の身体の線をなぞるように着物の上から触れてくる。
戯れではない、情欲の籠った触れ方に身体の奥が甘く疼く。
(信長様っ…本気でここで…なさる気、なの?)