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永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第13章 肝試し


「朱里…」

表情を曇らせた私を慰めるように、信長様が優しく頭を撫でてくれる。

「もう少し眠れ。朝まで傍にいてやるから…怖いことなど、もう何も起こらん」

「信長様…」

目蓋を閉じさせるように、柔く唇を押し当てられて、私はそっと目を閉じた。
信長様の包み込むような優しさを感じながら、その夜私はゆっくりと穏やかな眠りの中へと誘われていった。





「朱里っ、ごめんな。大丈夫か?」

翌朝、天主で目覚めた私は、いつもどおりに信長様を迎えに来た秀吉さんに顔を合わせた途端に、平謝りされた。

実はあの肝試しの部屋で仕掛けをしていたのは、秀吉さんと光秀さんだったらしい。

(二人してこっそり隠れてたんだ…想像すると何か可笑しいかも…)

普段は言い争う姿しか見せない二人が、仲良く(?)暗闇の中で潜んでいる姿は、些か面白かった。

「うん、もう大丈夫。ごめんね、秀吉さん、心配させちゃって」

「いや、俺らも調子に乗りすぎたよ。悪かったな…気を失うなんて、よっぽど怖かったんだろ?」

申し訳なさそうに眉尻を下げる秀吉さんを見ていると、怖かったのは事実だけど責める気にはなれなかった。
信長様も、隣で呆れたように私達を見ながらも、何も仰らない。

「ふふ…もういいよ、秀吉さん。怖かったけど、信長様と一緒で楽しかったし……ああっ、でも、最後のアレは本当に怖かったなぁ」

「ん?」

「ほらぁ、あの赤い打掛の女の人のお化け。あれはどうやったの?秀吉さんか光秀さんの変装?あれ見た途端、信長様の怪談話、思い出しちゃって、私、凄く怖かったんだから…」

「……………………」
「……………………」

秀吉さんの顔が急にひどく強張り、信長様の方をゆっくりと見る。
その信長様も、怪訝そうな表情を隠すことなく、じっと押し黙っている。

「……朱里、それ、本当に見たのか?」

「え?見たよ。え?秀吉さん達の仕掛け、だったんでしょ?」

「いや…俺と光秀がやったのは、無惨絵の掛け軸と刀が動くやつだけだぞ。第一、俺達は御館様の怪談話の内容は当日まで聞いてなかったんだ。知らなかったんだから、そんな仕掛け…出来るわけない」

「………っ…それって…」

(嘘っ…じゃあ、あれ、本当の幽霊……?)

さぁーっと一気に血の気が引いた私は、結局その日は一日中寝込むことになったのだった。




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