第13章 肝試し
恐る恐る目を凝らして見てみると、確かにそれはお化けなどではなく絵だったのだが、幽霊のような白い着物を着た女が血みどろの男の生首を持った恐ろしい無惨絵だった。
「何でこんな絵がここに……」
直視するのが怖くてチラチラとしか見れなかったが、どうやら無惨絵は床の間に飾られた掛け軸のようだった。
真っ暗な部屋の中で、それはかなりの異彩を放っていた。
しかも…床の間には、無惨絵の掛け軸だけでなく、一振りの刀が飾られていて…その前に小石が置かれていたのだ。
(あの小石を取って来いって言うの?絶対無理っ…怖すぎて近づけないよ…)
見ただけで身体が拒否反応を起こして、その場から動けなくなった私と違って、信長様は特に感じるものはなかったらしく、さっさと床の間の方へ向かって歩き出そうとする。
「信長様っ、待って…」
「怖いのなら、貴様はここで待っておれ」
「やっ、やだ…置いていかないで下さい。行きますってば…」
(怖いけど、信長様と離れるのはもっと怖いっ…)
信長様に手を引かれ、恐怖で竦む足でヨロヨロとついて行く。
床の間の前まで来た信長様が、無造作に小石を掴んだ、その時だった。
ーガシャンッ!
いきなり、触れてもいないのに、刀がガシャンと派手な音を立てて台から落ちたのだ。
「きゃあぁ!」
(う、動いた!?勝手に動いたの!?もぅ、やだぁ…)
「信長様っ!」
完全に気が動転した私は、勢いよく信長様の身体に抱きついてしまった。
信長様も突然のことに油断されていたのだろうか、私に抱きつかれて、珍しく身体の均衡を崩されたようだった。
「っ、わっ、こら、朱里っ…押すな」
そのまま私が押し倒すような格好で二人して畳の上に倒れ込んだ。
倒れた拍子に、手燭の火が大きく揺らめいて……消えた。
辺りは一気に真っ暗闇になる。
「やっ…いやぁ…怖い…やだぁ…」
手探りで信長様の身体にぎゅうっと抱きつく。離れたくなくて、逞しい身体にピッタリと頬を擦り寄せる。
「おい、待てっ、朱里。そこは……」
頭上から信長様の焦ったような上擦った声が聞こえて……
「え?そこ…?ん…何かゴツゴツして…て、きゃあっ!」
頬に触れる硬くてゴツゴツした感触の正体に思い当たり、慌てて身を起こす。
(や、やだっ…私、信長様のアソコに顔を……)
偶然の事故とはいえ…恥ずかしい。
