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永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第13章 肝試し


「………『人柱』だ」

「……………え?」

「原因不明で何度も崩れる石垣を完成させるため、工事の責任者であった宮大工の男は、悩んだ末に自らの娘を人柱に立てることにした」

「っ…そんな……」

「その男は己の仕事に誇りを持った職人であり、他人が犠牲になるぐらいならば、と自らの娘を差し出したのだ。
人柱になる日、娘は、いつか嫁に行く時の為にと男が誂えていた赤い打掛を纏っていたそうだ」

「っ………」

「不思議なことに、その娘が人柱となって以降、事故も起こらぬようになり、石垣は順調に組み上がって城は完成した。
ところが、入城してしばらく経った頃だったが、城の奥まった部屋から夜な夜な女の啜り泣くような声が聞こえると皆が言うのだ。
その場所は、ちょうど娘が人柱として埋められた辺り。
祟りだ何だと皆が怯えて仕方がないので、俺は直接見てやることにした。
俺は祟りや物の怪など信じておらん。そんなものは、人の恐怖心が生み出した、まやかしだ。

その部屋は城の奥の奥にあり、昼間でも薄暗い場所だったが、確かに近付くにつれて、何となくじんわりと嫌な空気が漂っていて、微かに風の鳴るような音がした。啜り泣きの声と言われれば、そう聞こえなくもなかった。

それどころか、部屋の前まで来ると、今度は何かを引き摺るような音がするのだ」

ーズッズズッ…ズルッ…


信長様の臨場感溢れる語り口に恐怖心を煽られた私は、無意識にジリジリと信長様から距離を取っていた。


「俺が部屋の入り口の前に立つと、音はピタリと止まった。
不審に思った俺は、襖を一気に引き開けた。
その瞬間、俺は見たのだ…赤い打掛を引き摺って歩く若い女の姿を……」

「きゃあああぁぁ…!」


ジリジリと身を捩り、信長様から距離を取っていた私は、手に生暖かい感触のものが触れて、完全に気が動転してしまった。

「いやぁぁ…」


「……ちょっと、あんた…勝手に人の手、触んないでくれる?」

「へ?家康…!? な、何…?」

「あんた、俺の手、踏んづけてる」

「えっ、ええっ!?ご、ごめん…」

生暖かいものは家康の手だったらしい。
無意識にとはいえ、大きな声を出してしまい、恥ずかしかった。


「くくっ…貴様ら何を遊んでいる?」

「遊んでないですよ!の、信長様…あの、そのう…本当に見たんですか?」

「ん?」

「だ、だからその…」
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