第13章 肝試し
「……………」
ふっ、と蝋燭の火が吹き消される。
「じゃ、行ってくるなー」
「あ、あぁ…」
何事もなかったように、さっさと部屋を出て行く政宗を、私は呆然と見送っていた。
(こ、怖かった…なんなの、あれ…本格的過ぎるんだけど…)
「…どうした、朱里?」
「えっ?あ、あぁ!すみません、信長様…」
あまりの怖さに、無意識に信長様の羽織の端を握り締めてしまっていたらしい。
クシャリと皺が出来てしまっていた。
慌てて手を離し、必死で皺を伸ばそうとする私を見て、信長様は可笑しそうに笑う。
「くくっ…怖いのなら、羽織でなく、俺の身体に抱きついていてもよいのだぞ?」
「い、いえ、そんな…怖くなんか、ないです」
「強がり言っちゃって…あんた、顔引き攣ってるよ」
隣から家康が呆れたように口を挟む。
「うっ…だって…さっきの政宗の話、ちょっと出来過ぎじゃない?現実味があり過ぎるっていうか…」
「……本当にあった話、ではないのか?」
低く重苦しい声で、信長がポツリと呟く。
「ひいぃ…や、やめて下さい、信長様っ!脅かさないで…」
「くくっ…だから、怖いのなら抱いていてやると言っておるだろうに……意地っ張りな奴め」
スッと手を取られたかと思うと、手の甲にちゅうっと熱い唇が押し付けられる。
「ちょっ、信長様!?人前ですよ…」
「それがどうした?俺は、貴様の緊張を和らげてやっているだけだ」
「おやおや、お熱いことで」
「はぁ…他所でやって下さいよ」
「御館様っ、ご自重下さい!」
(ほらぁ……秀吉さん、怒ってるじゃない…)
恥ずかしくて、一気に顔に熱が集まったように熱くなってしまい、先程まで感じていた、ぞおっとする寒さを忘れるようだった。
何だかんだ言って、信長様は私を気に掛けてくれてはいるらしい。
気遣いが過剰過ぎて、ついて行けてないけど……