第12章 武将達の秘め事③
ニコニコと屈託のない笑顔を向けてくる三成を、ギロリと睨んでやるが、毎度のことながら、この男には全く届いていないらしい。
「はぁ…分かりましたよ、言えばいいんでしょ、言えば…はぁ…俺はまぁ…足とか、結構好きですけど?柔らかい太ももとか、細い足首とかがチラッと見えたりすると…ドキドキします…」
(くっ…俺、何で皆の前でこんなこと言っちゃってるんだろう……あぁ、もう!信長様のあの愉しそうな顔…ほんと意地が悪いったら…)
苦々しい思いで顔を顰める家康にはお構いなしに、武将達の無遠慮な会話は続く。
「足かぁ…確かに色白な女の太ももとか、唆るよな。恥じらう女の足を大きく開かせて一気に…か?」
「政宗さん…酔ってるんですか?さっきから際どい発言が多すぎですけど…」
「馬鹿っ、飲んでないんだから酔うわけないだろ?俺は素面だ」
「はぁ…いっそのこと、酔ってて欲しかったですよ」
頭を抱える家康をチラリと見遣ってから、光秀は三成に視線を向ける。
「三成は……どうだ?」
皆が何となく気になっていることがある。
書物に没頭し、戦術のことばかり考えている三成は、はたして女の経験があるのか、と。
その柔らかな物腰、母性本能を擽る頼りなさのせいで、女性達からの人気は高いようだが、本人には自覚はないらしい。
城下に出れば、たちまち町娘らに囲まれているようだが、特定の恋仲もおらず、遊んでいる風でもない。
三成の女関係は、信長ですら把握していないのだった。
武将達の注目が集まる中………
「私は…女性のお尻が好きです。柔らかな桃尻をぎゅうっと鷲掴みにして後ろから……というのは、些か興奮致しますね」
「……………………」
一瞬、場が凍りついたようになり、気まずい沈黙が流れた。
「お、おおっ、三成、お前にそんな趣味があったとはな!」
「こら、三成、破廉恥なことを言うな。御館様の御前だぞっ!」
「……最低」
「え? 何故、皆様、そんな風に仰るのですか?私はただ、自分の好みを申し上げただけなのですが……いえ、もちろん、それほど経験があるわけではないので、願望のようなもの、と言いますか…」
頬を赤らめ困惑したように皆を見回す三成を見て、信長は可笑しそうに口元を緩める。
(純粋そうな顔をしおって、いざ女に目覚めれば、此奴が一番厄介やもしれんな)