第12章 武将達の秘め事③
皆の無遠慮な視線が集中する中、秀吉は戸惑っていた。
(っ…女の悦ばせ方って…閨でのことだよな。参ったな…そんなこと言えるかよ。全く光秀のやつ、余計なことばかり思いつきやがって)
「どうした、秀吉?言い難いのか?ならば、質問を変えよう。女のカラダで好きな部分はどこだ?どこを念入りに愛でている?」
「うっ…お前、質問がいきなり直球過ぎるだろ…」
あまりに恥ずかし過ぎる質問に、全身の熱が一気に上がる。皆の前で自分の性癖を曝け出さねばならないとは…だが、先陣に自ら名乗りを上げた手前、逃げ出すなどは、もっての外だ。
御館様が、先程から興味深げに俺を見ておられるのも気になる。
ここはやはり、御館様の右腕たる俺が、そのご期待に応えねばなるまい。
「くっ…俺は……唇が…好きだ。口づけが一番興奮するっ…」
「………………」
恥ずかしさを押し殺して、思い切って言い放った秀吉を、何とも言えない緩い沈黙が包む。
「………普通だな」
「秀吉らしい真面目な答えだな…面白くも何ともねぇけどなっ!」
「政宗さん、秀吉さんに面白さを求めるのは無理ってもんですよ」
(おいっ!人がせっかく恥ずかしいの我慢して言ってやったのに、何だ、その反応はっ!くっ…御館様まで視線が冷たい……)
「……では、次は…政宗だ」
何事もなかったかのように、淡々と進行する光秀をジトッと睨んでやるが、あっさりと受け流される。
「俺か?俺は…そうだな、やっぱ胸かなぁ。手に余るぐらいデカいのがいい。こう、両手で鷲掴んでじっくり揉んでやると……」
「こ、こらっ、政宗!いやらしい手つきをするんじゃない!」
恥ずかしげもなく女の胸を揉む仕草をする政宗を、秀吉が慌てて止める。政宗がやると、妙に生々しいのは何故だろう。
「くくっ…では、次は家康か…」
「は?俺は言いませんよ。なんだってあんた達に教えなきゃいけないんですか。嫌ですよ、俺は」
光秀に話を振られた家康は、当然のように拒否をして、素知らぬ顔で酒を呷る。
「…家康、答えよ。答えねば、どうなるか分かっておるのか?貴様の子供の頃の恥ずかしい秘密を……披露しても?」
「ちょっ…信長様!?脅すなんて、卑怯ですよ!まったく…いい歳して大人げないことしないで下さい!」
「家康様の幼少の頃のお話、是非お聞きしたいものですね」
「黙れ、三成」