第12章 武将達の秘め事③
「……………」
「………おいおい、これはまた…」
「あぁ…これは何とも…」
「くっ…実に、卑猥だな」
「っ…ちょっと!考え過ぎでしょ…信長様まで、何、想像してるんですか!」
「そういうお前だって、やらしいもん想像してんだろ?家康」
「なっ…政宗さんと一緒にしないで下さい!俺は、純粋に美味そうだなと思っただけで…やっ、その、美味そうって、食べ物として、ですよ!?」
「家康様っ…このアワビは食べ物ではないのですか??こ、このぐにゅぐにゅと蠢いてる様は、確かに生き物のようですが……」
「お前、その言い方…ぐにゅぐにゅって……はぁ、もぅ、黙ってて、三成。話がややこしくなるから」
純粋そうな顔をしながら、実は一番イヤラシイのは三成なんじゃないかと、家康は秘かに思うのだった。
武将達が何故に、いきなりこんな話をし始めたのかというと……それは目の前で美味しそうに焼かれるアワビのせいだった。
殻ごと七輪の火に炙られたアワビは、ジリジリと身を焼かれる苦しさに堪らず、ぐにゅぐにゅと身を捩りながら悶え始めていた。
肉厚な貝の身がうねうねと畝り、身のふちのビラビラした部分が、ぐにゅりと縮んだり開いたりと収縮を繰り返している。
炭火の熱さに身悶えて、生き物のようにグニャリグニャリと蠢く様が、何とも生々しい。
そう、それはまるで女のアソコのような……
もともとアワビはその形状が女性器に似ていると言われることもあった。だが、活きたまま焼かれるアワビがヒクヒクとひくつく様子は、まさに絶頂を迎える女のアソコそのものだった。
男のモノを締めつけるようにギュウッと縮んだかと思うと、くぱぁっと緩んだり…
貝の旨みたっぷりの汁が、貝の身の周りにじんわりと溢れているのが、また堪らない。
汁が身に絡んでグチュグチュと美味そうな音を立てている。
ゴクリ、と唾を飲む音は誰のものだっただろうか。
一層激しく畝りだすアワビに、武将達の熱い視線が一心に注がれていた。