第34章 32.
「俺の腕をよくもやりやがって、くそアマァ!」
走る勢いそのままに、腹部に思い切り蹴りを食らった。
ごき、と腹部で嫌な振動がある。蹴られた位置的に、肋骨が数本やられたようだ。
『がっ…!~~~っ』
声がでない程の痛み、また身動きが出来ない状態のまま、吹き飛んで瓦礫に腕や頭をぶつける。衝撃でピンとした姿勢は解かれたけれども動けず。
受け身も取れずに、怪我を防ぐことは出来ない。首と目だけ、その私を蹴り飛ばした相手を睨みつけた。
逃げられないんだ、さっき大口を叩いたじゃないか。私が守ってもらっちゃいけない。
瓦礫のどこかにきっとゾンビマンも居るだろう。きっと再生も追いついてないから出られないんだ。そんな状態をこいつらに見せてはいけない。
私の目の前の醜い男を見上げた。
『……っ、』
息を飲んだ。折れた骨で圧迫する肺のせいではない。
あ、あれ…。
既視感。
ここでは初めて遭遇する怪人なのに見覚えがあって、本能的に目を逸らした。
動かない体中に冷や汗が流れる。拘束されてなお身体が縮こまるように強張る。背中がぞくっとする。私は、こいつを知っている……。
「……あ?くそアマ、よぉーく見たら…」
こっちみろ!…と顔を殴られ、上を向けさせられる。
きっと私は、恐怖に怯えた目をしていると思う。
醜い男はニチャア、とより醜く笑った。
「路地裏に捨てられてたメスガキじゃねーか!」