第34章 32.
『……っ!?』
パシン、と静電気のような音が鳴り、身体が言うことを効かなくなった。上げていた手は体にピタッとくっつけられて、足は左右ともくっついた様子でピンとした姿勢で硬直する。
敵をまず、竜巻で纏めて奥へと追いやった。流石にボロボロの味方が近くに中で殺せるような威力は出せない。出来ても呼吸が出来なくての窒息だろう。
だからこその電気を打ち込んだんだ。渦の中でしっかりと感電するようにと打ち込んでおいた。順調に攻撃をしていた。
その瞬間にこれだ。
視線をこの金縛りのような状態にしやがった、その人物へと向ける。
「風神をも凌駕しようとしていたのだ、多少は評価してやろう」
暴風が遠ざかっていった音がプツリと消える。
元より風のなかった無風の状態に戻り、静かになる。嵐が消えた瞬間だ。
首だけ、重くても少し動かして見れば私が折角出した攻撃は消え、中からぽとぽとと落ちていく影。
「超能力に耐性の無いこいつを縛ってしまえば、後は虫の息のタツマキと攻撃手段の乏しいガラクタだ」
超能力で私の動作を封じたサイコスは手を下げる。
それに合わせるように、私は立っている事が出来ずに地べたに倒れた。
受け身も取れずに倒れると、地面に遠い程痛みが強く、頭を打った瞬間に一瞬目の前が暗くなる。わざと叩きつけられたようにも感じられた。
「ハルカ、立てないのか!?」
『……ぐ、身体が言うことをっ聞いてくれない…っ』
こちらに向かってくる怪人たち。サイコスは何度もタツマキを超能力で痛めつけ、その度にガンガンと瓦礫にめり込む音。床に倒れていても分かる、瓦礫の破片が飛び散る音が響く。
私やジェノスに向かってくる怪人の走る音がどんどん近付く。僅かに身を捩るだけで力が抜かれたように、主の居ないマリオネットのように横たわったまま。
ジェノスが私をかばい目の前に立つも、黒い精子の攻撃に押されて吹っ飛んでいった。