第4章 2.
細かくなってきた煎餅を流し込むために茶をすする。ジーナス博士は黙ったまま、視線を机に移す。そっと震えた手を湯呑みを引き寄せてゆっくりと飲んだ。
「本当に、変わったことはないんだね?些細なことでも良い、例えば、健康面とか…」
些細なこと。
何かあったか?と空間をぼうっと見て最近のハルカを思い返す。
……。いや、これは止めておくべきか。ひとり首を振ると、目が合った博士がこれまた目をかっぴらいて同じ様に首を横に振った。言えと言うのか。俺に。
「隠さないで言ってくれると、原因が分かるかも知れない。ハルカの為とも思ってくれ…」
「……」
すごく言いにくいから、口の中がさっぱりするように茶をもう一度飲んだ。
その俺を見て、博士はテレビの電源をスリープモードにする。聞く気満々か。
「些細なことだろ?健康面っていうほどじゃねぇけど………
性欲がめちゃくちゃ強いとかだよ。割と怪人倒した後とか興奮してんのか、相手しろって誘われたりな…。
ほら、あんたの娘がそういうのだって知りたかったか?」
ハルカの養父に言う俺が恥ずかしいわ。
しかし、それを聞いた博士はそのまま、少し考えて質問をふっかけた。
「君は、よく食べてよく寝ると言っていたね?そして前に、自由に怪人を狩りに行っている、とも」
話題にしてはあまりにも真剣すぎる表情に嫌な予感がした。
「どういう事だ?何かハルカに、他にもあるのかよ?なあ、ジーナスはか、」
「ハルカは!クローン人間だ……私の元でのクローンとは、一般のクローン技術とは違う、だが…、」
──それを聞いた俺は、どんな顔をしていたんだろうな。
最後まで聞き終えると、ハルカの住居方向へ走りながら電話を掛けた。