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欠落の風雷暴

第32章 30.


遠く飛んでいくサイコスに、打ち出せる手段は試しても届かない。
現れた遠距離攻撃の敵にゾンビマンやアマイマスクは苦戦を強いられそうだし。
敵はじろりとゾンビマンの方向を見る。

「せっかく逃げても無駄だったな、ゾンビマン」
「はっ、男のケツ追うなんざ、お前もずいぶんと変わった趣味を持ってるぜ」

ゾンビマンがアジト内で戦っていた相手なんだろう、察するにこの怪人と戦って全裸にされたんじゃないかな?
タツマキの居る方向にサイコスが向かってしまった事もある。どうするべきか。

「桂馬」

パカァン、と空に蹴られた怪人。駆動騎士が帰ってきたようだ。

「駆動騎士、やられていなかったんだな」
「防御は完璧だ、まさかの伏兵には驚かされたが…こちらは我々がなんとかしよう。先程のサイコス、あちらに向かった奴の方が危険だと判断した。戻れる者は戻れ」

剣を構えて、散らばったヒーロー達が集まる。
ジェノスが、ホームレス帝に炎を打ち出して応戦し始め、光の玉のとばっちりが頭上からパラパラと降っている。近くに居るだけでも邪魔かもしれない。

「あー、戻れっても、俺達は片道切符だぞ……」
『着地をなんとかしてくれれば風神の力であっちまで吹き飛ばせるけど』
「あん?風雷暴の、そんな器用なこと出来たっけか?」
『大雑把に吹き飛ばすって事だけど…あっ、それ不安しかないって顔してる感じ?』

ドンパチと騒がしく戦い始めたのを見て、それしか無いなら決定事項だった。
童帝君とのもしもの時の秘策。この不安な表情を見てネタバラシは無理だろうね…、言い出しっぺが批難される。ここは黙っておこう。

『着いて行きながらなるべく優しく落とすから、祈ってなよ』
「落とすの前提じゃないか!」

アマイマスクが叫んだけれど、渦巻く風神の力は高まって来ている。
ゴウゴウと音と小石と砂煙を上げて、突風で空中に打ち出した。

「気を付けろよ!」

こちらを見ずに戦い続けるジェノスの励ましに、私は、そちらこそと返した。
上空で風神の力で駆けながら、定期的に3人を風で吹かし、墜落しないようにと調整する。吹かすとは軽い表現だけれど、実際は人間を空に投げ飛ばし、落ちないように風を当て続けるという行為。とても集中力が居るから、これ以上の手間は入れたくない。
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