第32章 30.
ドォン…!
雷となって落ちた先には損傷の激しい機体の中で睨みつけている女が居た。
その女を警戒するように、ジェノス、駆動騎士、アトミック侍に右肩から先を再生しながらのゾンビマンが囲っている。
「おのれ……っ!タツマキ以外は雑魚であると侮ったか…!」
手がブルブルと痙攣している。攻撃が効いたのだろうか。
私に一番近い位置に居るアマイマスクはちらりと私を横目で見た。
「向こうの状況は?」
『タツマキの元へ合流を試みてる。塔の先端だから、今頃、肉体派がなんとかしてると思う』
痙攣の止まる女。そしてまた思い出したようにブルブルと震える。これは、負傷などではない震え…、怒りによるものだ。
「タツマキ…タツマキさえ……タツマキさえっ!」
「仕掛けてくるか、」
駆動騎士が変形をする前に、女が手を出す前に、瓦礫下の新たな攻撃が彼をこの場から遠ざけていく。現れた光の玉が駆動騎士を目の前で打ち上げていった。
丸い玉がボコボコと瓦礫から打ち出され、この場にいる者達がそれから逃げる。新たな怪人だ…!
光の玉は、当たった瞬間に瓦礫を破裂させた。ドゴンッなんて大きな音を立てて、小石を打ち上げて振らせた。能力系の怪人だ。
「来たか、ホームレス帝」
「地上が静かだと思ったら…無様な姿だな、サイコス」
ウェーブした黒髪ロングヘアーの男は、この女をサイコスと呼んだ。
そのサイコスという名前には聞き覚えがあった。私に既に取り込まれ、首元に僅かに存在する風神がかつて、サイコスの下に付いていたという事。
「この場はお前に任せよう。私はタツマキの息の根を止めなくてはならない」
『…っ!』
急な動きにバチッ、と小規模の放電しか出せない。サイコスを狙うもボロボロの機体から飛び出し、タツマキの居る方向へと生身で飛翔して行く。
「くっ、俺のも届くか…!」
「飛空剣も届かねぇ!」