第30章 28.
「実のところ、ヒーローではなく師としてケジメをつけられる事に感謝しとる。作戦からワシを外したのはベストな判断じゃったよ」
バングは、顔を伏せ、肩を落とす童帝の肩に優しく手を置いた。
「恩にきるぜ、少年」
「……、」
童帝とバングの会話が終わった所で、フブキは声のボリュームを上げた。
「お願い!みんなお姉ちゃんを…、タツマキを援護する作戦があるなら急いで!!私も何でも協力するから!」
「地獄のフブキ…、」
「お姉ちゃんきっともう、意識がとんでるわ!」
見上げるフブキと、ここに居る人達が塔の天辺へと視線をやる。
上空には緑色のオーラを纏う空、塔の先端にはより緑色の濃いオーラを体に纏うタツマキ。その周辺で戦闘機のような物が撃ち合っている。
風を吹かせる。
一人は怪人独特の気配、もう一人追撃する方はヒーロー側だろうか。時折変形しているから、ジェノスのようなサイボーグ、またはロボットなのかもしれない。
タツマキの近くに寄る人物。炎を放つ。あれは…。
『ジェノス…?ジェノスも来ているの?』
吹かせる風から良く知る人物を知る。
その質問に、アトミック侍が答えてくれた。
「ああ。風雷暴が丁度地上で黒い怪人と戦ってる時にな。一回ここに来てタツマキを援護するから協力しろってわざわざ言いに来たんだ」
『……てことは、サイタマも来ているのか…』
「サイタマは一緒には来ていないわ、居たならば確実に勝てるんだけれど…」
『(流石に、住まいのあるZ市がこの瓦礫の山になってるんじゃ近くには居るはず…、地上に居ないのならばまだ地下に居るものかもしれない…)』
冗談をそう言わないジェノスから、様々な話を聞いている。
海人王やらムカデの大きな怪人やら、宇宙船のボスまで倒したとも。であるならば、地下に強い怪人でもいて戦っている可能性もありそうだ。
「……でだ、得物を持ってるやつァ、俺とイアイと風雷暴、遠距離特殊能力持ってるのは地獄のフブキと風雷暴、援護は童帝、その他は肉体派だ。盾となるとクロビカリとゾンビマンが受け持つ、ここまでは良いか?」
「待て、俺のダークネス♂ディーブ☆投げキッスが無事決まればハートも腰も墜とす事も出来るぞ」
「……あー、分かった、肉弾戦時やれる時にそのとっておきの技、やっといてくれ」