第27章 25.
「まさか…肉弾戦でクロちゃんが勝てなかったっていうのか…!?」
プリズナーが丸くなっている、黒い肉の塊……、クロビカリにガロウについてを聞いていく。
私はまだ両手が自由が聞かない、両手の会った場所を見てもまだ修復が掛かりそう。口からふっ、と息を吹いて会話をより聞こえるように風神の力を使う。
「ガロウは生きてる…きっとすぐまた現れるだろう…。その時はもう誰の手にも負えないかもしれない。
なんなんだ、あいつは……い、いくら殴ってもブチかましても立ち上がって…みるみる膨れ上がって押し寄せてくるんだ……まるで…絶望の化身のような──」
私自身、クロビカリと多くを語った事はなかった。それでも会った時は自信に満ちた姿だったはずだ。
しかし、その大きな身体に対して子犬のように震えた声は小さく、集まった皆が耳を彼に傾けていた。
「おっ…」
一度どもり、大きな体は震える。たくさんの汗、すすり泣く声。
「俺は負け犬だ、折れてしまった…」
「クロちゃん……」
ぴちっとしたジーパンを履いた、アマイマスクから舌打ちが聞こえた。
皆が聞いているなかで、彼はクロビカリに苛立っているのだろう。一歩一歩彼に進んでいく。
「勝てなかっただけじゃない。話した通りさ、判ってしまったんだ…。
求めていたのは気持ちの良い勝利。俺がやってきたのは何も誇れる事じゃない。自分の強さに酔いしれたいだけの正義も覚悟も伴わない、単なるヒーローごっ、」
カッカッカ、と進み続けたアマイマスクはその足取りのままにクロビカリを一度蹴り倒す。
ゴッ、という大きな音。勢いよく飛ばされる巨体がそのままに瓦礫の中ザシャアア、と転がる音。
常人ならば怪我を負う所、クロビカリはピンピンとしてその姿に更に腹を立てたであろうアマイマスクがどんどん蹴り続けていく。
仲間にしてはやり過ぎだ、私は腰を上げてもたもたとゾンビマンの側まで寄っていく。
ボコボコにされたはずのクロビカリは体勢は崩れていたものの、埋もれた瓦礫から身を起こし、再び体育座りをした。
「本当にすまない……」