第26章 24.
アトミック侍が顔をしかめ、私の隣に近付く。
「除名されそうってだけで金的はねぇよ、玉も飛んでいってるしよ…、あいつには死より痛ぇぞ…?」
『そうかな?私には除名しようとした"それ以外"にも大事な所を蹴られても仕方ない理由があったんだけど?』
「(マジな顔じゃねーか)……そ、そうかよ」
何も言えねえ、とアトミック侍は男の痛みを知っているのか震える男の肩に手を置いてなんかぼそぼそと慰めている。
瓦礫に座ったまま見上げる。上空では戦闘機のようなものが2機。光線のようなものが放たれている、ただの戦闘機ではなさそうだ。
ガラ、と瓦礫の崩れる音とペタペタという足音。
片手でやや前傾姿勢の内股、痛みを訴える表情をした男が近付いてきた。
「不能になったらどうすんだよ…ガキが作れねーだろ……」
『…チッ』
「キレてんなよ、せっかくの可愛い顔が台無しだろ」
私の隣に腰掛けるゾンビマン。隠すのはもうやめ、自身の足に肘を乗せている。もう再生が終わったようだった。
「ともかく、だ。無理矢理にもお前のヒーローとしての人生を終わらそうとし、そこからかけ離れた人生で終わらそうとしてすまない。俺のこと、嫌いになったか?」
察したのか、ジーナス博士から聞いたのか。どちらでも良い、私が嫌だった事を理解してくれた。
嫌いになる訳がない、そういう正直な所も好きだ。言いたいよ。すき、すき。好き、なんだけれど。
痛々しいカップルでも見る視線が各所から刺さる。
『……そういう事は、人前で言うもんじゃ、』
「おー…、赤くなってる」
『…!あっ!腕無いんだった!』
きっと赤くなっているであろう、顔を隠すための手が無い。再生出来ているのは左が肘先、右が手首ほどまで。隠せない私はよろよろと立ち上がり後ろを向く。
小さく、とても小さく、隣に座る男に聞こえるくらいに、"好きだけど"と呟いて。私の耳に、それが伝わったであろう男が立ち上がり、小さく笑った声が聞こえた。
「なにっ、ガロウにヤられた…!?」
「……ハルカ、お前は負傷状態だ。回復するまで座って、再生に専念してろよ」
ゾンビマンは少し離れた、クロビカリとプリズナーの元へと向かっていく。
手が回復したら、食料を摂ろう。プリズナーとクロビカリの会話を聞きながら、ガロウについてを知っていくことになる…。