• テキストサイズ

欠落の風雷暴

第25章 23.


「ハルカ!」

後ろからのゾンビマンの声。振り返った時、球体の膜で助けられたヒーロー達が歪んで見える。声はゾンビマンだった。走ってきているけど、なんであいつまた全裸で…、

ゴポポポッ!

自分の胸に腹に…体に何かが突き刺さっていく。水が赤く染まる。
カラカラの瓦礫に湧いたのはオアシスではなくエネミー。この水こそが怪人だったんだ。

「うわああっ、あの水が来てる!」
『…っ、ゴボ、』

肺に水が入ったからか、血を吐き出したんだか、全身を包み込む水の中。目の前の水が吐血に染まる。このままでは息ができない。リスクのある不死といっても、自分で対処しなくては。
腕を上げて力を振り絞った。その瞬間、雷を起こす前に、胸部と両腕に更に見えない突きが加わる。
私が空気を圧縮して撃つように、水を打ち出しているようだ。これでは水の中の黒ひげ危機一髪だ、透明な水がより赤く染まっていく。

足手まといにはなりたくない、惨めにも不意打ちで、こんな目にあっているとは…。不甲斐なさに腹が立つ。
腕から集中できないなら、と自分の体に雷を纏った。

バリ、バリバリバリ!水が振動し、蒸発していく。見える範囲に浮く眼球はガタガタと震え、効果があったようだ。
もっともっと、綺麗サッパリ消えるくらいに風神の力で竜巻を起こすように、雷を纏って確実に……。ポンチョ型のレインコートは水流に合わせ流され、真上に飛ばされていった。
台風の目のように、私は空気に晒された瓦礫の上に立っていた。吐瀉物でも吐き出す勢いで咽ながら口や気管、肺にまで入り込んだ水を吐き出す。薄まった血が、水の中に混じっていく。
周囲にはあの水が私の血で赤くなって、パチパチと攻撃を食らっている。
渦巻の中心…、私はまるで嵐の中心にでも取り残されたようだ。

『(この怪人、麻痺でもしてるのか…、)』

両腕を上げて……、いやそんな事出来ないか。
左は肩から、右は肘から下が千切られて、傷口からは血液と蒸気。
今日だけでずっと怪我をして、痛いことばかりだ。振るう手もないじゃないか。

『……邪魔!』

頭突きをするようにトドメに雷を水の怪人から上空にかけて落とす、いや…撃ち上げた。
物をぶつけるような音ではない、威力ある雷鳴のドゴ、という音とともに水は瓦礫へと飛び散っていった。
/ 214ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp