第25章 23.
周りを見ると、塔のようなもの……巨大な女の怪人だ。それに浮く小さな緑の光、タツマキ。
Z市はさらにねじれていく。
あちこちに私と同じような球体が見える。ヒーロー達が中に入っている…。
『……っ』
膜の中に入り込む風を感じ、内側から確認をする。球体の膜が消えようとしていた。
ここは空中、下の地面で待ち受ける怪人がニタリと笑う。
少しだけ休まった体、骨折も治り、手首は捻挫程度まで回復した。肩を回す。
ブワッ、と重力のままに落ちないように風を起こし、着地をする。
狭い空間ではなく、野外。広い空間。私にとっての最高の舞台だ。のびのびと力が出せる。
辺りには瓦礫。鉄くず。
右側の瓦礫に突き刺さった鉄くずに、私からの雷を落とす。ピシャアアッ!と空気を裂く大きな音を受け、鉄くずは溶けてドロドロとしている。真っ赤に熱されている。
風神のちからで溶けた鉄くずを巻き上げる。ねじれていく、細く長く、より鋭い槍のように。
「武器の補充なんざ、意味ねぇんだ!つまんねぇ戦いするってのかぁ?」
『私もお前のようなゴム製玉ねぎを斬るのはもう飽き飽きよ、…食らっときな!』
吹き付ける竜巻に槍の乗せ、勢い良くゴムのドテ腹に突き刺さる。
「ガッ…、」
やっと"中身"に到達していたようで。
はみ出た、即席の槍に向かい手を向けた。
私の周囲に、雷雲でもあるかのような、唸る音。私の体表をほとばしるのは稲妻。
青白い龍が獲物へと食らいつきに行った。
ドォォ…ン、僅かに揺れる大地。
光の後は溶け切った液体ゴムと、不純物、そして赤い液体金属が瓦礫に垂れ流されていく。
フーッ、フーッ、と呼吸を荒げ、獲物の死を確認した。
死んでいるからもういい、と肩の力を一瞬抜いたその時、ゴポ、コポポ、という水の音。耳は治ってるから怪我で聞こえる音じゃない。
音の発生源を突き止めようと、左右を見る。その行動は無意味で、足元から浸かっていくように、ゆっくりと濡れていく。