第4章 2.
「おや、また来たのかい?ゾンビマン」
「…ああ、邪魔するぞ」
俺は1人、ジーナス博士の元に来ていた。
ハルカはいつも通り、ヒーローらしく怪人を倒しまわっているだろう。せめてどこに行くとか言ってくれれば着いていくんだが、きまぐれに風のように…ヒーローネームの元になった、風来坊に怪人を倒すためにふらふら飛び回っている。ヒーロー狩りでさえもあいつを探すのはきっと苦労するだろうよ。
そんな恋人の父親、養父であるジーナス博士。俺はこいつに不死身シリーズとして生み出された実験体。ハルカも実験体だ。つまりは幼馴染みたいなもんか?それはそれで響きがいい。
そんな博士のもとに最近は通って、茶を貰う事がしばしばあった。…色々と許すことは出来ないが。
湯呑みと硬そうな煎餅を茶菓子に置かれた机。いつものゴリラ、アーマードゴリラは店番をしていて来ないようだ。
「どうだい、ハルカは。元気かな?」
すっかり毒が抜けたみたいに、あの実験ばかりしていた博士が嘘のようになってしまった。ハルカと久しぶりに会って傷ついた時以降か、気を付けているらしく更に丸くなった。
目の前に出された緑茶の湯気を眺めながら、ハルカの笑顔を思い出す。取り戻せた、幸せそうなあの顔だ。
「ああ、良く食ってよく寝て、なかなかに良い発育状態で本当に元気そのものだ」
「…そうかい。私も気を使ってやれなかったのもあるが、本当は本人に来てもらいたかったものだよ」
ずず、とその若い見た目で茶をすする。中身はヨボヨボの爺でありながら、若さを手に入れた博士だ。昔から茶が好きだったのだろう。ギャップがあった。
博士を追うように俺も茶を飲む。僅かに和やかな空間ではあるが、リラックスは出来なかった。
「久しぶりに会ったというのに、父親らしく振る舞えなかったお前のせいだな」
「ははは、そうだね。研究熱心な部分が出てしまった、私の悪い癖だ。11年前からの、たった1年にも満たない家族になってしまったな」
テレビが付けられる。博士は沈黙に耐えられなかったのだろう。