第23章 21.
『ガフッ…!』
血液と硬い何か。
顔、打ったっけ?と舌先で口の中を弄る。上の歯、下の歯…全てある。これは歯ではない。とすると、腹と肋骨にダメージが入って、肺に複雑骨折した骨でも入ったか。
手の平を見ながら、口や鼻から血をぼたぼた垂らし、耳を澄ませる。
ゴ…ゴゴゴォ……。
──空気抵抗のある何かが打ち出されて、こちらに向かってきているな。
ゴムの体なんだ、自身を飛ばすのも能力のうちだ。
ピッ、とレーションを取り出し、へし折り、口に投げ込む。少しずつとはいえ食べていても、もうお腹が減った。再生力と能力を補うためのリスクだ。口の中が血の味で満ちて味がよくわからないけれど、我儘なんて言ってられない。
正直、強くなって再生力もプラスされても、私は短期戦が向いていると自覚している。こんなに長時間戦う事は初めてだった。
さて。このゴム野郎は、脇差で斬り込んでいくか、雷をなんとかして高熱のなにかに変換しないと狩ることが出来ない。
視界に入る、ツヤのない筋肉の男は頭からこちらに飛んでくる所だった。
『能力や遠距離が得意ってわけで、私は武闘派じゃないんだけどなぁ』
脇差を抜刀し、撫で斬る体勢を取った。