第22章 20.
数階落ちた先も、多少は外見の違う長い通路であった。
風を吹かす。
とりあえず足元の怪人は死んでいる。前方300メートル先に3体、右奥特になし、後方50メートル先1体。
怪我した所、耳元が肉でも焼くようにジュウジュウいってるなぁ、と触れるか触れないかの位置で確認すると、視界に蒸気。ゾンビマンの様に蒸気を出して修復が行われているのが分かる。
耳を下に、ぴょんぴょんと跳ねて奥の血をなるべく落とす。小指を突っ込むとやや固まり始めた血液が付着した。
耳で大体、これくらいの速度で回復するのか、と元に戻った耳に触れ、ポンチョの内側から一本レーションを取り出して、口でパッケージを乱雑に開ける。
片手は脇差、後方に向けたまま。
『うーん、通信もマップも確認してる時間がないぞ、私との相性悪すぎでしょう…』
救助は終わった、あとは怪人の親玉を狩ること。風神のいうサイコス、は親玉かどうかは分からないし、他のヒーローが倒してるかもしれない。
通信で聞いた声は皆ピンピンしている。きっと私が発信機を保護する袋に入れている時も、アトミック侍やフラッシュやクロビカリ、プリズナーやタツマキにキングが応対していたんだろう。
普段ソロでの活動をしていた私にとって共闘はなかなか無いことだけど、この広い怪人達のアジトの中、皆が頑張ってるんだ。ゾンビマンも。
……ゾンビマン、会ったら頬に一発かな、腹に一発かな。そう考えながら、レーションを頬張る。
高カロリーなはずだけど、量が無いのは不便だ。すぐに空腹になる。生理的欲求を満たす手段が現地では食べる方法しかないからなぁ…。
周りを見回すとバイクにクリーチャーと装甲がセットになった、いかにも欲張りセットという見た目のやつと目が合う。
「『あ』」
向けた脇差に電気を纏わせる。パチッと鳴って、周囲をカメラのフラッシュを焚いたように明るくさせた。
「ウワッ」
驚くことに、初見で逃げていく怪人。向かう先は後方、怪人が3体居た方向。
風を起こし、状況把握。
あれ、20体…?
生体反応の増えた先に向かっていった、さっきの欲張りセット。その中に人間…、会ったことあるな、これはアトミック侍か。