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欠落の風雷暴

第20章 18.


『遅れた分急がなくちゃね…』

早速、発信機を袋に入れて保護した。
コンクリートの床や壁を蹴って疾走る。雷神の力、雷を纏うように、いや私が雷になって。突き当りまでを駆け抜けて行く。
通りすがりの怪人と、吊り下げた裸電球を壊しながら、殺しながら。ゴゴゴゴロ、と龍の唸り声のような響きを立て、威嚇するようなピシャア!という雷鳴を放ちながら…。悲鳴と電球の割れる音を聞きながら。

突き当りの壁に風を当てて減速し、階段前に止まった。
振り返れば残った電球の薄明かりのなか、コンクリートに血のアートを施した怪人達の死骸が端にゴロゴロと転がっていた。

じっとみる。風を吹かす。生体反応はない…に等しい。怪しい方向に雷を一発放つ。なんの反応もない。
これ、討伐数報告とかないよね?と心配しながら、背後の階段からやってきた怪人を、風で切り刻みながら後にした。

****

ゴッ、ゴッ、ゴッ…。

重量のある斧が、怪人協会のアジトの通路床にぶつかり、鈍い音を立てている。
怪人の飛び散った体液がぬるりと手を伝う。気持ちが悪ぃ。

「今ので何匹目だ…、童帝の奴……、敵の数がなるべく分散するように突入の配置をしたとか言ってたが…」

良いものを見つけた。斧を振り上げアジト内の配電盤を壁から引き剥がす。バツン、と音を立てて通路の電気が消えた。
仄暗い通路の奥、蠢く何かの気配。怪人が固まってやがる。

「よう」

声を掛けられ、驚いた怪人に、先ほどの配電盤を投げつけ、感電させてやる。

「シャアッ」

そいつらに向け、銃を向けて放つ。ドンドンドン、と銃口から怪人へと弾のプレゼントだ。
銃を構えた両手に違和感。ドシュ、と蔦のようなものが突き刺さった。壁から飛び出すのは怪人、でけぇ口を開けて飛びかかってきた。

「てめぇがゾンビマンか!ちょっと死んでけや!」

先ほどまで使っていた銃は右手に、左側の袖口からもう一丁の仕込み銃を取り出す。
怪人に向けて発砲する音と、薬莢の転がる音。怪人は死んだ。死んでも俺の腕には蔦が刺さったままだ。

「…俺の負担、多くないか?」
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