第20章 18.
発信機を手に取り、中にシースルーな巾着袋が入っていた。
ノートの切れ端が2枚、一緒に2号の本体に挟まっている。かさ、と音を立て、メモを読む。
"この中に入れておくと微弱な電波しか受け取らないけれど、発信機を保護できます。大きな技を使うときには注意して利用して下さい。外している時は普通の電気の技には対応してます"
もう一枚の紙は急いで書いたであろう、発信機のマニュアルなど。現在地の確認方法や通信方法など書かれている。あ、シースルーの袋はこの部分を引っ張ると大きな布状になって、助ける子供が感電しないように被せる事が出来るのか。間違って引っ張らないように注意しよう。
そして発信機は袋にずっと入れておくのはやっぱり駄目か、とその場で発信機の電源を入れた。
『こちら風雷暴のハルカ、遅くなりましたけど今から突入します』
役目を終えた1号と2号のロボを端に寄せて、辺りを警戒しながら通信を入れる。ザッと小さなノイズが鳴り、幼めの声…童帝が受け答えた。
「了解です、ではそのまま現在地を見失わないように突入して下さい」
ジジ、と違う通信が入る。通信は一斉に入るらしく、何となく誰が通信しているかは把握した。
「おう、お目覚めか?眠り姫。ばっちりめかして来てくれたか?」
ゾンビマンだ。ドキッとした。そういえば、久しぶりの会話だ。セキンガルに掛けた電話の雑音くらいに小さい声しか聞いてなかった。
『"サプライズ"はありがとう、それは感謝する……けど、最後に会った時の"あの事"は許さん。再会次第、ぶん殴ってやる』
「充分に制裁くらったんだけどなぁ」
短い笑い声を聞いて通信を切り、シャッターの奥へと入る。薄暗い中明かりはちゃんと吊るされており、コンクリートの打ちっぱなしの上下左右の風景が奥まで続く。
奥までは薄明かりでは見えず、暗闇だ。
歩きながら手を前方に出す。きゅるっと音を立て、風が巻く。状況を把握した。
とりあえずはまっすぐ伸びていて、人間は居ない。人間は居ないが、怪人は突き当りの階段までに30は居る、と知る。
私の体力は、まだまだ食料を補給しなくとも元気だ。