第19章 17.
家を出る挨拶を済ませて、たこ焼きの家に背を向ける。サイタマ達とは違う、家を出る瞬間の挨拶。どうしてか、むず痒い気持ちになる。けれども、嫌じゃない。
うん、家族…だ。これが私がずっと求めていたものなんだろう。嬉しい。
両手を上げ、微風を吹かし位置を把握、大地を蹴る。
76号の風神の力を多く取り入れ、再生能力が付き、たくさん寝て、たくさん食べたから力は満たされている。上空とまでは行かないがさっきまで居た家が小さい。2つの豆粒がこちらを見ている。
空中を壁を蹴るように数歩疾走る。私の体に纏わりつくように青白い電気が疾走り、かつての"急ぐ"感覚。私は雷に溶け込んだように空を駆け抜け、目的地目掛けて雷鳴を上げて落ちた。
丁度怪人が居たので踏みつけるように到着する。
ピシャア!と空を切り裂く雷鳴にかき消され、怪人は叫ぶ間もなくあっという間に黒焦げになり、私の足元に肉の台座となっていた。
何名かのヒーローと私と電話をしたセキンガルがあんぐりと口を開けて固まっていた。
『すいません、遅刻しました』
「あ、ああ…」
後ろにもう一体見えたので、銃を構えて風を打ち込む。クリーチャーのような見た目の怪人の頭は豆腐を叩きつけたようにパン、と潰れて、胴体に君臨する頭部なき肉はそのまま倒れた。
『…そこ』
あそこにも隠れているな、と指を鳴らす。
私の身体から湧き出る電撃が今にも壊れそうなゴミ箱裏の怪人に直撃した。
微風を吹かし、周囲には今の所居ないのを確認して、セキンガルに向かい直した。
『では、私は配置についてきます』
「あ、ああ、助かる…」
感電してないはずだけれど、皆驚いたのか、雷が落ちたような顔をしていた。