第19章 17.
咀嚼が終わり、協会の白いポンチョ型レインコートを羽織る。ボロボロで少しマントみを感じなくもない。
内側の肩や背中辺りにレーション用のポケットがあり、仕込まれている。雷神の力でやられないように、パックはただのプラスチックではなさそうだ。
「あ、ハルカさん青のり付いてますよ!」
『ん、あ、ほんとだ』
唇や、歯に付いている様なので歯磨きをしたり、また寝癖がと言われて整えたり、博士に保湿クリームを顔や手に塗り込まえたりしている。
「よし、リップクリームも塗ったな?完璧だ、サンプルとして何枚か写真を撮っておこう」
『(デートに行くんじゃないんだけどな…)』
カメラに収められながら、腰周りの武器がカシャ、と音を鳴らし、出発をせがむ。
行かないと、と私は玄関で靴を履いた。
「もう行くのか、無理はしないんだぞ」
『ん、ヒーローだから。ヒーローは遅れてやってくる、でしょ?』
食事をしっかり摂りすぎて遅刻というのもどうかと思うけど。
名残惜しそうに、少し困った顔の博士は眼鏡を掛け直す。
「ここは君の家でもある。いつだって帰ってきても良いんだ」
『今住んでる場所から引っ越しすることを考えたら、ね。それに私が帰ってきたら66…、ゾンビマンがしつこく来るようになるよ?』
苦笑いをする博士。つられて私も苦笑いをした。容易に想像しやすかった。
『行ってきます』
「…行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃ~い!」