第3章 1.
「あ?何?」
いつまでも返事のない私の様子を気にしたのがこちらに顔が向く。
『サイタマが強くなったのって、この前言ってた、しっかり朝食摂って、トレーニングをする他にはないの?』
「急になんだよ、ジェノスみたいな事言うやつだなぁ。どんな時でも絶対に欠かさないでやったら強くなってたんだよ。そんな事聞くなんて、ハルカも強くなりたいのか?」
テレビコマーシャルが流れている。夕日のシーン、その茜色の光をサイタマの頭皮が受け、肌色に夕方の赤が映る。会社のロゴのシーンは水色でサイタマの頭皮が水色を映し出す。
サイタマ流の強くなる方法はあまりにもリスクがあるようだ、と鏡のような頭部から視線を反らし、私は少し肩を落としてこの話題を切ろうと決めた。
『……ゾンビマンの泥仕合に付き合うと体力が見合わなくって』
「はいー、ノロケー!以上!この話題終わり!」
細かいチップスの乗ったパッケージを持ち、1人パッケージを傾けてサラサラと口に流し込むサイタマ。僅かに涙目を浮かべながらも怒っていた。
でも、言ったことは間違っていない。私自身、体力はある方だ。だのに相手は不死故に尽きることがない。実際、腕がもげても再生する、という事は性交時に出すものも補充される。つまりは底なしという事だ。毎度薄皮を外す度にたっぷりと溜まったものを捨て、新しく着けたものにまたたっぷりと吐き出す。回数も多い。だからこそ相手になる不死身ではない私は体力的に最後までは保たず、脳みそ空っぽなふにゃふにゃな状態にまでなる。そこまで来ると知性のある人間ではなく、繁殖期のメス猫に近いかも知れない。ただただ、腰を振って求めていく。
それに更に興奮したゾンビマンは追い打ちを掛けるように燃え上がり、ひたすらに腰を振るのだ。
とはいっても嫌いではない、むしろ自分から誘う時もあるのでやめて欲しいという訳ではないのだけれど。