第3章 1.
…この前私は見てしまった。
玄関外を箒で掃除するサイタマが、交尾をする虫に、見せつけるようにリア充しやがって、と掃き出していた事を。
『で、何が言いたいわけ?』
チップスのおまけの開封済みのブラインドカードを確認する。バネヒゲが出てきた。
それを確認し、ブラインドの袋に戻してサイタマ側へと渡す。サイタマは自分のを探しているのではないか、とジェノスに相談された事もあり、消費がてら私達で食べることが多くなっていた。ほとんどは私が食べている気もするが、割とサイタマと一緒に食べる機会が多い。
「なんかあったのか?」
『なんか、とは?』
カリ、と音を立てて私が食べる。パリッとサイタマも後に続いて食べ咀嚼する時間で会話は止まった。
「だからさ、ハルカは風神の力で敵の位置が何となく分かるだろ?この頃怪人の出現する頻度も多いだろ?今だって怪人は出ているし…」
どきりとした。したけれども、平然を装った。
『まあ、出掛けてる時に倒してきたけれど…』
「どちらかっていうとお前はゾンビマンを越したい方だから、夕方までずっと怪人倒しまわってる方だろうし、じっとしてるのが苦手そうなお前だから何かあったのかなーって」
互いの湯飲みが小さいため、自分の湯呑み茶碗にコーラを注ぐ。注いだ後蓋をして、視線はテレビに移った。
「のろけ話だったら聞かねえけど、他のことで聞くだけなら聞いてやる」
聞いてしまったほうが良いかもしれない。強くなる方法を。でも、サイタマにはジェノスという弟子が居る。ジェノスでさえも強くなりたいと願い、サイタマの行動を一つ一つじっくりとメモを取るのだ。
私はどのような強さかは話にしか聞いていないし、実際に見たのはソニックやフブキが居る時の反復横とびくらいだったけれど、ジェノスが思わず弟子になりたがる程の強さだ。
私は湯呑みに残るコーラを飲む。量は少なく、炭酸もかなり抜けていてただ甘い。