第18章 16.
お昼のサイレンが遠くで聞こえる。
着替えを済まし、武器を携えた私は茶の間の机にある充電済みの携帯を取る。気が利いている、博士か、アーマードゴリラか。
開けばたくさんのゾンビマンの着信履歴。
うわ、36件もある。いくらなんでも掛けすぎだ。移動中、節約のために電源を切ることもあった、その間も掛けていたのかもしれない…ストーカー気質があるわ。
そのゾンビマンの名前の並ぶ中に童帝の文字やジェノス、協会のも含まれていた。
協会からか。いつもは私から掛けていた分、珍しい。かけなおそうと携帯を耳に押し付ける。
通話中のメロディが流れ、待っている間、ジーナス博士とアーマードゴリラがせっせと茶の間にたこ焼きを運んでくる。
熱した油や紅生姜、濃いソースに青のり、鰹節の香りが漂い、匂いが美味しいと頭で理解した瞬間にお腹がなった。
「こちらセキンガル!」
携帯の向こうは何やら騒がしく、けが人が痛てて、と叫ぶ声。
一体何があったのだろう、と思いながら私は名乗った。
『…風雷暴のハルカです。私情で出られず、また充電も切れてまして…着信があったみたいなんで掛けたんです、けど…』
「風雷暴のハルカか、丁度いい」
電話の奥、ハルカか?と私の名前を呼ぶ声に聞き覚えがあった。1週間は前に聞いた声だ。聞き間違いはない。
少しだけ涙がじわっと出てきた。
「実は…──」
『──なるほど、わかりました。ではZ市に向かって、童帝くんのロボを拾います』
現地に、"ジャコウネズミロボ1号と呼ばれる小型のロボットを配置しており、私が向かったらその1号から2号の元に行き、2号の体から私用の発信機を取り出して欲しい"、との通信を貰った。
怪人協会はすでに動いていて、下っ端の怪人を配置してきたという。それらを蹴散らして、丁度突撃するか、のタイミングでの私の連絡だった。
「ゾンビマンが待つか、と言っているが…」
『いえ、本来の作戦通りで進めていって構いません。さっさとそちらに行きますから…』