第15章 13.
武器や服などの荷物を研究所の培養槽の側へ移動させた。
S級昇格記念に、とサプライズであげた脇差はよく使い込まれていて、手入れのされた刀身を見ればとても気に入って使っているのだと受け取れた。
大切にしているんだな、とあげた俺側も嬉しくもなる。
俺がここに来たその時点でハルカは4日目だったらしい。博士の元に俺は泊まり、今日で5日目だった。もう少しでタンクのオリジナルのエキスが無くなる、その後は出られるのだろう。
キャスター付きの割と座り心地の良い椅子に座り、今は眠る人魚姫を見上げる。椅子の背もたれがギチ、と鳴った。
「"ヒーローとして生きられるようにして下さい"、か……」
こんな状態を望むほどに、生きる理由を無理に奪うような事を俺はしていたんだな。
最後にハルカに触れたのはいつだったか。
目の前の暖かさも柔肌も思い出せない。起きたとしてもまず、口を聞いてくれるかも分からない。
触れたい、もっと側に寄りたい。ハルカの熱を感じたい。今も少しずつ注ぎ続けるタンクの中が空になるのを待ちながら、培養槽のハルカを見上げる。
ペタペタとスリッパの音が近づいてくる。
ドアを開ける音、ジーナス博士か、と視線をハルカに戻す。
「タンクの中が空になったとしても、培養液の排水と全身の乾燥処理をするからすぐには外に出られないぞ?」
片手にたこ焼きのパックを持ち、俺に差し出す。受け取ってハルカを見上げながらパックの輪ゴムを取った。
パキ、と割り箸を割って少し熱の去ったたこ焼きを頬張る。
「……ハルカの股ぐらにお前、触っただろ」
天井からのチューブの一部が足の間に入ってる所を見上げる。自分で入れられるものじゃないだろう、とジーナス博士に意味を含めて視線を送った。
その視線を受け取った博士はなんとも思っていない、と言った表情で眼鏡を掛け直してハルカを見上げる。
「尿道カテーテルの事か?養子とはいえ娘だ、子に欲情などしないさ。幼少期も同じ事をしているし、性器や陰毛の状態で"ああ、大人になったな"くらいにしか思わないよ。
もっとも、"66号"の恋人だろう、変に手を出したら…君のことだ、後が怖い」
「研究者はぺらぺらと事実を並べておっかねぇな。ハルカが起きて聞いてたらあんた、殴られてるぜ?」