第14章 12.
「邪魔するぞ」
片手を上げて、ゴリラに挨拶する。ゴリラはのんきな喋り方でいらっしゃい、と言った。
そして、あ!と叫んで明らかに焦った後に両手で口元を押さえ、挙動不審に玄関を塞いだ。
「ま、待って下さいね、ゾンビマンさん…えっと、何か御用でしたか?」
「…あん?」
……。
こいつは、くせぇ。ピンとくるものがあった。
そんなゴリラを片手で押し、俺は家へと上がりこんだ。
玄関から廊下、茶の間。誰も居ない茶の間にどかっと座る。静かだ。
おかしい、なんかあるなと部屋を見渡す。ただの留守ならゴリラはあんな態度は取らん。いつもよりも静かな部屋を物色していく。
ふすまを開けると隣の部屋。布団などが端に寄せてある。
そして…。
ジーナス博士の元にあるわけが無いものを発見し、目を見開いた。
「なんでここに俺がハルカにあげた刀があんだよ…」
物色していくと証拠が出てくる。押し入れを開けると着ていたであろう服や銃までもあった。ボロボロの白いレインコートは最後に羽織った服装だった。血の跡も残っている。
「ジーナス博士!どこに居る!出てこいよ、ここにハルカが居るんだろ!?」
一部屋一部屋回って隠れていないかを確かめる。
ハルカが自らここに来るとは考えられなかった。ハルカは嫌がって居たからだ。じゃあ何故、居たという痕跡がある?博士が連れてきたのか?
頭がおかしくなりそうだ。ここに居るから、だから連絡も取れなかったという事か?
トイレのドアを開け、ここにも居ないことを確認するとドアを締める。探していない部屋、場所はあとはどこか?
背後に足音を聞き、振り返った。
「…ジーナス!」
「やあ、ゾンビマン」
胸ぐらを掴み、問い詰める体勢へと入った。
博士はウッ、と勢いのある俺の行動に呻く。
「ここにハルカが居るんだろう、とぼけても無駄だからな」
証拠は十分にある。とぼけでもしてみろ、その眼鏡かち割って、長い前髪も引きちぎってやる。それくらいのつもりで迫ったのだったが。
焦ること無く、ゆっくりと頷く。
「ああ、彼女から自らやってきたよ。彼女は隠し部屋にいる」
「……っ」