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欠落の風雷暴

第12章 10.


覗き込む博士から少し気まずくなって、視線を逸らして天井からぶら下がる照明を見る。ここにゾンビマンは居ないから、自分で言葉にするしか無かった。
言うのに躊躇った。
でも、方法はコレしか無い。私はしくじりだから、力が弱い。力が欲しい、それを言うのは……。

『76号に未完成だと、しくじりだと言われた。確かに私は弱い。強くなったと思えば体がこうなる、クローン故にきっと長く生きられないんでしょ?
強くなりたいなんて、嫌がって、恨んで、便乗して逃げ出した私が…今更言うことじゃないって…分かってる。それでもオリジナルのような、それ以上の強さじゃないとこの世界では生きていけない』

静かに博士は聞いているようだ。呼吸音が聞こえる。

『私はあとどれくらい生きられますか、ジーナス博士』

視線を博士に戻す。博士は悲しそうな目元をしていた。

「そうだね、このままヒーローをしていけば……君はとても派手に戦うからね。一ヶ月も耐えられない。ヒーローである事や、戦うのも辞めて穏便に、普通の人のように暮せば3年から5年くらいは生きられるかもしれない。それをゾンビマンに伝えたら、彼は後者を取ったんだよ」

静かに聞いて、首を振った。
それじゃ駄目だ。我儘かもしれないけれど、私は、私はヒーローであることが嬉しかったんだ。
力を振り絞って体を起こす。掛け布団がずれてめくれ上がる。そこで違和感があった。

『ひだりて……、』

切り刻まれて無くしたその手があった。手の平を見る。
拳を作る、開く、指が動き、そのひとつひとつの動きを頭で理解している。
脳内が、サーッと血が引く感覚。博士を見る。博士はニコリと笑った。

「再生技術だよ。君はハルカ、77号のままだ。安心してくれ」
『…っ(良かった…、ん?良かった、のか…?)』

一度体を起こせばだる重いのは消えていく。むしろ、下腹部の痛みだ。そうだ、生理中だった、と布団の中で漏れてないか確認するも漏れはなく。
…なんとなく、おむつみたいの履いてるのは、博士がやったんだろう。まあ、養父って存在だし……これもいいのか?いいって事にしておこう。
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