第11章 9.
移動中、下から飛び出すのは怪人2体。
「ドクロドローンのやつ、風雷暴の戦力ちゃんと削ってるぜ!死に損ないだ!」
「どれ、最後に俺達が手柄を、」
『邪魔!』
無事な腕を振りかざす。
ピシャア!と裂くような雷撃が放たれて当たった場所から黒焦げにした。置物を棚から落としたように、怪人達は地面へと落ちていく。
怪人の生存確認なんてしてる暇はない。連絡も…余裕がない。
『ゴボ、』
咳き込むと血しぶきが口から飛んだ。右手で口を拭う。
そして移動しながら、左手の切断された先を見る。血がポタポタと風にのって後方へと置き去りにされていく。先ほどのようなスピードは無理だ、減速するけど確実に前に進んでいこう。
希望の風景が視界にようやく入った。
地面に降り立つ。
ふらふらとした足取りで、ファンシーな看板の側へと歩み寄っていく。
気がついたであろう、キョロっとした目のアーマードゴリラがたこ焼きを詰める作業を止め、私の方を見た。
「いらっしゃいま、キャーーー!」
きゃーって、何だよ…。
挙動不審に、壁にぶつかりながらも、家の中に駆け込んでいく。
私は残された力で一歩、また一歩と進んだ。足が、ガクガクと震えて転びそう。
限界なんてもうとっくに超えていた。力も、痛みも、意識も。我慢を続けてやっとここまで来ることが出来た。
片方のスリッパをうまく履けないまま、靴下で走り寄るジーナス博士とそんな転びそうな博士を支えるアーマードゴリラ。
そこで私は糸が切れたように、力尽きて倒れてしまった。