第11章 9.
「まずは止血だ!」
立ち上がった私の手当を始める。
ものすごく痛い、全身に回るような痛みだ。切断部分からは血が溢れ、周りを見渡せば手を切られた時に飛び散った赤が撒き散らされている。
左手だけじゃない、私は血も吐いてたんだった。そう言えば救急車呼ぶとか言ってたな。
力いっぱいにきつく縛っていく、イアイアンとブシドリル。包帯にするべく生地を切り裂いて作っているのはオカマイタチだ。何も言わずとも連携し合っていた。
イアイアンも片腕が無い。慣れているのかもしれない。とても手際が良かった。
「救急車くるからね、もうちょっと我慢よ!」
……病院にいったら、私は病院から出れないかもしれない。
だったら、ちょうど向かってたんだ。急いでいけば大丈夫。左頬はぶつかった衝撃で痛むし、胸の奥は呼吸する度に痛む。左腕なんてない。それでも、行ける。
ここから大体、直進で10分くらいだ。行ける…まだ生きられる。
『手当、ありがとう…』
そう言って少しかがむ。
風神の力で地面から勢いよく飛び上がった。
「その怪我でどこに行くんだ!今の君は無理をするもんじゃないだろう!?」
叫ぶ声がしたけれど、私は一直線に向かった。ジーナス博士の元に。
切られた腕は切断場所が割と綺麗な方だけれど、指やら腕に至るまではぐちゃぐちゃだ。
地べたの血だまりには切り刻まれた指や筋肉と、骨、おぼろ豆腐のような皮下脂肪がミンチになっていた。
あれがスローモーションのように見えなかったら腕だけじゃ済まず、胴体や頭もやられていた。もっと悲惨な現場になったんだろうな、貧血と恐怖で身震いをする。
博士のもとまでもう少し。頭がガンガンと痛む。
あ、協会に電話してないや。イアイアン達がしてるかな。少しでも違うことを考えながら移動する。怪人に腕を切り刻まれた時に一緒に切り刻まれた白いポンチョが撥水しきれずに赤く染まっている。いい生地なのに。新しいものを貰うようだ、失血死などせず生きていればの話だけど。
『ご、ふっ!』
移動だけでも能力を使い続けている。私の吐き出す血は早すぎる移動に頬や顎から背後へと垂れていく。顔中がぬるっとして気持ち悪い。血で真っ赤な顔なんだろうなぁ。
もう少し、もう少し…。