第10章 8.
顔を起こすとこちらに飛んでくるドローン。
イアイアンが居合抜きの構えをし、後から2人が構える。
ブブブブ…
頭が本体のドローンはその鋭いプロペラを、倒れた私の左手に突き刺す。躊躇いもなく、手慣れたように。
『がぁっ…!』
指からザクザク。
腕へとザクザクザク。
縫うとかそんなレベルでは治らない、という乱暴な傷つけ方だ。痛みに腕を引っ込めようとした。叩きつけられた体はまだもう少しだけ動かせないから。
地面の砂や砂利を傷口に埋め込むように、絶対に治らないように、例え奇跡的に治っても感染症をも発症させるように。
ああ、私の腕が、ひき肉になっていく……。
外側から内側へ、ザクザクと肘までプロペラのミキサーが迫ってくる。
これ…スローモーションで見えているんだ。危険な時はそうやって危機回避する時間を人は持つことが出来る。
振り絞った力で体を転がす。ゴキ、とかブツン、とか嫌な感覚があった。左の二の腕から先は無くなっていた。
『くっ、ゥゥ…あああっ!』
転がった先でもたつきながら立ち上がる。
シュ、と風のような音と、何かがボト、と落ちる音。
イアイアンがドローン型の怪人を討ち取った姿があった。